認知心理学、社会心理学、深層心理学、動物行動学などの知見。「左側パラダイスの法則」って?

本能的に左側に囚われている人間

この法則のことをまだ書いていなかったので、書きます。

「左側パラダイスの法則」ってご存じですか?
そんなふざけた法則聞いたことないよ、と思う人は多いと思いますが、これはお店やレストランを設計するときに、はずしてはならない有名な法則なのです(「左側パラダイスの法則」という名前はボクが勝手につけたんですけどね)。
知らないで設計しているデザイナーやプランナーがいたら教えてあげてください。
呼び方は人それぞれちがうでしょうが、優秀なデザイナーならそれを頭に入れてお店やディスプレイをデザインしているはずです。
どんな法則かって? それは、

「人間は無意識のうちに左側が好き」

という法則です。
何も制約のないところでは、基本的に人間は左側通行になります。
これは駅構内や地下街などを観察しているとわかります。
「そんなのウソだ」という人もいるかもしれないのですが、これを実験した結果もあります。

人は何も言わないと左側通行になりやすい

人は何も規制がないと「左側通行」になりやすい

グラウンドに長い壁をつくり、1000人の学生にその壁に沿って歩いてもらいました。
すると66・2%が右に壁があるほうが歩きにくいと答え、87%の人が左側のほうが歩きやすいと回答したそうです。
危険物が前方から迫ってきたとき、左右どちらに回避するかという実験もありますが、結果は74.3%が左側、22.3%が右側、後方が2.9%というものでした。

ボクも独自に商店で実験しました。
東京のある商店街で、休日店頭にワゴンを出し、左右どちらから来る人がそのワゴンのところで立ち止まり、商品を見るかというものです。
結果はやはり左側でした。
ワゴンで立ち止まった78.3%の人が右側から、21.7%が左側から来た人だったのです。
右と左が逆じゃないかといわれるかもしれませんが、よく考えてみてください。
右側からワゴンに来た人というのは、歩いていて左側にワゴンが見えるのです。
これは歩いているとき人間は左側に注意を向けているということです。

多くの人が左側を歩くことを考慮にいれる

以前、アメリカのテーマパークをプランニングしているデザイナーと話をしたときにいわれたことがあります。

「テーマパークでは、多くの人が左側を歩くということを基本に設計するんだよ」

そうなのです。
左側が好きというのは、人間にとって無意識に持っている本能といえるのです。
たとえば大型店の店内は、客の流れを「反時計回り」で設計していることが多いと思いませんか?
これは、人間の左側に支配されている習性と、右利きの人が多いことを利用した「動線計画」です。
「左側パラダイスの法則」に乗っ取った動線計画といえるでしょう。
これを利用することによって、ひとり当たりの購入金額を増大させようとする工夫です。

また「商品の陳列は、お客さまの目線が左から右に動くことを考えて陳列する」というのもあります。
これも「左側パラダイスの法則」です。

たとえば壁面の什器に商品を陳列する場合、人間の視線が左上から右上、次に斜め左下、最後に右下と、「Z」に移動するということを考えて陳列するというマニュアルもあるのです。つまり新商品など目立たせたい商品は、左の上のほうに陳列して、強い印象を与えようという作戦です。
これは価格差のある商品、売りたい商品などの位置決定に大きく影響していきます。
並べ方を間違えると、売れない売り場、売れないディスプレイをつくってしまうことがあるのです。

陸上のトラック競技や野球のベースはなぜ左周りなのか?

他にもさまざまな「左側パラダイスの法則」と思われることがあります。
身近な例をあげると、トラック競技。
すべてのトラック競技は時計の針と反対の左回りです。陸上競技、競輪、スピードスケート、野球のベース、例外は競馬やF1レースくらいのものでしょう。
実際に陸上競技では「左回り」と「右回り」だと、「左」のほうが記録がいい人が多いそうです。
あと、自転車に乗るとき皆さんはどちらから乗ります?
きっとほとんどの人が左からだと思います。

このように、人間は無意識のうちに「左側」にとらわれていることがわかります。
だからこの法則を計算に入れて、さまざまな空間デザインをしなければなりません。
お店の動線、ショーウィンドウの位置、ディスプレイの構成、POPの位置……。
これを知らなければ、知らず知らずのうちに買いにくい店をつくったり、落ち着かないレストランをつくってしまって、結局損をしてしまいます。

心臓が左にあるからじゃなく、脳が原因らしい

「そんなの知っているよ。左に心臓があるから、無意識のうちにかばっているんだ」
そう物知り顔でいっているデザイナーが近くにいたら、その人は勉強不足です。
それは大昔の説で、今はそんなことをいっている人はいません。
利き手の関係という説もあります。
利き手はほとんどの人が右です。
確かにこれは関係があるでしょう。

でも本当は、実は右脳と左脳の関係なのです。

空間を把握する脳は研究で「右脳」だということがわかってきています。そのため、ほとんどの人が左側の空間に注意を向けるのです。
認知心理学の世界でもこの法則が証明されています。
同じ紙面にグラフィックと文章をさまざまな位置関係でレイアウトし、どういうレイアウトが一番認知されたかという実験をした心理学者がいました。
それによると、グラフィックが一番認知されたのは紙面の左側、文章が一番認知されたのは右の下という結果でした。
これはまさに脳の役割がちがうということの証明でしょう。
左脳は論理的であり、理性的であるといわれ、言語、分析等を得意としています。
また右脳は直感的、ひらめき、感性、非言語であるといわれています。

このように、人間は動物の本能ともいえる無意識に、行動が支配されていることがあるのです。
売れるお店、売り場、ディスプレイというのは、人間の本能的な感性を考えることも重要であるというのが、最近の研究でわかってきました。
認知心理学、社会心理学、深層心理学、動物行動学を駆使して、少しでも多く購買してもらえる可能性がある店づくりを考えること。
「左側パラダイスの法則」を計算に入れ、ディスプレイやお店の什器レイアウトを見直してみましょう。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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