売れる店の条件はライフスタイルの訴求 エクスマ思考で考えよう

「歯磨き」のライバルが「音楽」?

あるコンセプトやセンスで統一された店は、エクスマ的な店です。
不特定多数の万人に受けるのではなく、特定の層に受け入れられる店。
それは個性的な店だということ。
個性的な店が繁盛する世の中になっているのです。

今までは同じカテゴリーの商品がライバルだったが、エクスペリエンス・マーケティングでは、すべての商品がライバルになります。

たとえば、毎日ボクたちが使っている歯磨き粉。
各メーカーは、たくさんの商品を開発しています。
虫歯予防やホワイトニング効果、歯周病菌をやっつけるとか、口臭予防など。
あれこれと細かいニーズに対応したり、パッケージを工夫したりして、あの手この手で、他社の歯磨き粉よりもシェアを伸ばそうと頑張っています。
「店頭でウチの商品に手を伸ばしてほしい!」
その一心で、努力しているんです。

あるいは、スーパーの棚に並ぶドレッシング。
ものすごい種類がありますよね。
オリジナルテイストをウリにしているものも多いです。
一流レストランシェフ特製やヘルシー素材系。
他社のドレッシングとどうちがいを出すかを意識して、商品化されています。
ボトルだってスマートですよ。
目立たなきゃいけないんですからね。
もちろん、こういう競争、至極当然のことです。
だって同じ棚に並んでいる、ドレッシングのどれかひとつを、お客さまは買っていくのです。
選ばれなければ意味がないって話ですよね。

隣に並んだ商品がライバル。

こんなふうに「競争相手(コンペティター)は同じ種類の商品だ」と、誰もが考えていました。
それが従来の常識です。
モノの種類で競争相手が決まっていたのです。
ところが「体験」を売るという観点でこれらのモノを見ると、まったくちがって見えてくるんです。
価値観が変わっちゃうんですよ。
「歯磨き」のライバルが「音楽CD」になる、そういうことが起こっちゃうんです。

歯ブラシとCD

新しいカテゴリーが登場してしまうのです。

なぜなら、「どんな体験を提供できるモノか」という枠組みで、商品をくくり直してしまうお店が登場するからです。
「店がどのような体験をお客さまに提案するか」
その店だけの独自のくくり方で商品陳列の方向性が決まるということです。

たとえば、それはひとつの「ライフスタイル」であったりします。
そしてこの「ライフスタイル」のコンセプトに合った商品をチョイスする。
多種多様なものが選ばれることになります。
ひとつの生活シーンをつくり出す、ありとあらゆるものが揃っていたほうがいい。
「こんなスタイルの生活体験をお望みでしたら、ここに集めたたくさんの商品から、どれをお選びいただいても、きっと気に入っていただけるでしょう」
という具合に、あるセンスに沿った商品だけが売られることになるんです。

すると、どういうことになると思いますか?

商品をとりまく環境がガラリと変わってきます。
今までのライバルとはちがったライバルが隣に出現したりするんです。

セレクトショップはエクスマ的な店

たとえばセレクトショップってありますよね。
ボクの家の近くにもあります。
セレクトショップは若い女性を中心に、幅広い層に人気があります。

情報があふれて、商品も多様化して、どれを、どこで買っていいかわからない消費者にとって、あらかじめ、あるセンスで選んでくれているセレクトショップはとってもいいわけです。
特にそのセンスが好きだったら、自分にとってステキな店ということになる。

うちの近所のセレクトショップも、オリジナルのカジュアルウェアや、ステーショナリー、ペット用品、和洋食器やキッチングッズ、バスグッズ&寝具、自然派石鹸や化粧品、アロマオイルにCD、めずらしい花がとり揃えられたお花屋さんなど多様な商品が扱われています。
ひと通り生活をとりまく品々が、統一されたイメージによって厳選され、並べられています。

まさにいるだけで楽しい。

たとえばある若い女性が、ここに来て、休日の朝を演出するグッズを選ぶとします。
外に出かけるのもいいけれど、たまには自分のためだけの、ゆったりとした時間を過ごしたい。
そんなとき、まず心地よさそうな音楽CDが目にとまります。
そして店内を見回すと、とても使い勝手のよさそうな品のいい歯ブラシと、輸入物のきれいなアクアブルーの歯磨きチューブ、それに合ったシンプルなスタンドとカップを見つけたりする。
「気分をリフレッシュするには、こういうモノに凝ってみるのもちょっとした贅沢かもしれないな」と思ったりするわけです。
また、心がゆるみそうなブランチ・レシピが、見ているだけでも美しい写真と一緒に収められている料理の本。
ゴロゴロと寝ころぶのに気持ちよさそうな肌触りのよいピローやクッションがあったりします。
こんなとき、彼女にとっては、これらすべての商品が「等価値」なんです。

どれも、今度のお休みをリラックスさせてくれそうな小物たち。

それぞれの役割はちがっても、休日にステキなひとときを与えてくれる、そんな魅力的な商品であることに何ら変わりないわけですからね。
これが「歯磨き」のライバルが「音楽CD」になったりする、ということなのです。

たとえ「モノ」の種類がちがっても、買う人にとってはきっちりと一本のライン上に並んでいる。
どれをとっても自分好みのテイストの商品。
いいなと想像しているライフスタイルに近づけさせてくれそうな商品なわけです。
この店に来ることそれ自体が、自分に合った(あるいは憧れの)ライフシーンを擬似的に体感する、心地よい時間になってしまうんです。
もしかするとそれは、

「ある人にとっては価値あるものでも、ある人にとってはまったく価値のないもの」

という店づくりになるかもしれません。

でもかえって、そこがいいんです。
一度店が提案する「ライフスタイル」に共感した人ならば、そこに並ぶすべての商品に、自分だけの必然性を見いだしてくれます。

お店のコンセプトを気に入ってくださったお客さまは、「今度はどんなステキなモノとの出会いがあるだろう」と期待して、再び来店してくれます。
長くおつき合いできる「顧客」となっていただける可能性が高いのです。
既存の概念にとらわれず、自分なりの「くくり方」を思い描いてみましょう。
自分の商品やお店のカテゴリーをもっと拡げてみよう。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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