潔い店を発見
狛江駅から自宅まで、いつもは通らない道を歩いていた。
そうしたら、「トムヤムクン」という名前のレストランを見つけた。
タイ料理の店らしい。
エスニック料理は好き。
おまけに潔い!
何が潔いかというと、店名がそのまま料理名というのが、とてもいい。

ふらっと入ってみることにした。
店に入ると、スタッフは全員タイ人。
この時点で、ちょっと期待が高まる。
席について、聞いてみた。
「トムヤムクン、美味しいですか?」
すると、タイ人の綺麗なお姉さんが、少し片言の日本語で、にこっと笑って言った。
「はい。看板料理ですから」
そうだよ、うん!うん!
看板料理に決まってる。
そのトムヤムクンは、本当に美味しかった。
当たり前といえば、当たり前だよね。
だって、店の名前がトムヤムクンなのだもんね。
店の名前にするという覚悟
よく考えてみると、もし自信がなかったら、料理名をそのまま店名にするなんて、なかなかできない。
「うちは、これで勝負しています」
「これに関しては、負ける気がありません」
そんなメッセージを、店の名前で、最初から発信しているわけです。
僕も、無意識にこう思っていました。
「トムヤムクンって店名なんだから、少なくともトムヤムクンは美味しいだろう」
論理的に分析したわけじゃない。
ただの直感です。
でも、人はたいてい、こういう直感でお店を選び、こういう直感で信頼を置いている。
そして、こうも思った。
「トムヤムクンがこんなに美味しいなら、他の料理もきっと美味しいだろう」
これもまた、分析ではない。
期待が連鎖する感覚です。
ネーミングは、約束である
仮に、「まぐろ屋」という寿司屋があったとします。
あなたも、きっとこう思うはずです。
「とりあえず、マグロはうまいよな」
それは錯覚かもしれない。
でも、店側がそう思わせる名前を選んだ、という事実は残る。
つまり、ネーミングとは、
「これに関しては、自信があります」
「ここは、覚悟を持っています」
という約束の表明なんですね。
名前をつける、という行為は、思っている以上に、重い。
商品名・店名・会社名は、メッセージである
商品名、店名、会社名。
それは単なる記号じゃありません。
マーケティングのテクニックでもない。
自分たちは、何で勝負するのか
何を信じて商いをしているのか
その覚悟を、一言で、世の中に差し出す行為です。
だからこそ、名前を安易につけてはいけない。
逆に言えば本当に覚悟が決まったとき、名前は、自然と決まってくる。
あなたの名前は、何を約束していますか?
もし、あなたのお店や商品、会社の名前を見て、
「ここは、これが強そうだな」
「これは、きっと大丈夫だろう」
そう感じてもらえているとしたら、それはもう、立派な価値提供です。
名前は、最初の一言。
そして、最初の約束。
トムヤムクンという店は、その約束を、ちゃんと守っていました。
だから、また行きたいと思えた。
商いって、結局、そういうことなんだな。
藤村 正宏
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