戦わないことが一番の戦略 SNS時代は会社の人柄が重要

日本一っていう冠を求める時代ではない

ある町で『日本一のつり橋』っていうのが話題になっていました。
日本一のつり橋、20年かかって20億円の予算を使っている。
地域振興のために作りました。
観光客に来てもらいたくて。
この橋、TVで観ましたが・・・、
たしかにすごい。

吊り橋001

景観は素晴らしいし、高さはおそろしくなるくらい。
テレビでは、たくさんの人たちがこのつり橋を渡っています。
九州の山間の田舎に、九州全土から、山口や広島方面から渡りに来ています。
その光景は、都会のラッシュアワーの駅のようです。
町役場の人が自信満々の表情で言っていました。

「この橋のおかげで、5年後にはこの町の観光客が増えて、宿泊客も増える」

そういう目論見。
そして、そのつり橋わたるための通行料が500円。
渡った先には何があるのか?
町役場の人は、

「なにもありません」

?????
えええっ!ただ渡るだけぇ?
ということは・・・
『つり橋型展望台』っていうことですよね。

え?・・・?・・・?
これって、どうよ?
どう考えても、長続きしないんじゃないか、って心配してしまうんです。
だって、渡るだけですよ。
それだけで、500円。
一度は行ってみる人はたくさんいるでしょう。
でもね・・・、何度も言いますけど、集客施設の命は

「リピーター」ですよ。

渡るだけでほかには何もない。
毎年リピーターが増えていくとは思えません。
数年後には、運営管理費がかさんで、「自治体のムダな赤字施設特集」とかにとりあげられるんじゃないかと心配してしまうんです。

日本一というのは結局スペック、真似される。

どうして、スペックの日本一を目指すのでしょう。

「日本一の○○」

というネーミングが欲しくて、スペックの日本一を狙っても、スペックですから、ほかのところがそれよりも1センチでも高いつり橋を作ったら、それでおしまい。

だいたいスペック日本一っていうのは、
お金さえあれば誰でもできることです。
すぐに次の日本一に抜かれてしまいす。
実際にこの日本一のつり橋ができる前、それまで日本一だったある県のつり橋はもう日本一とはいえなくなったわけです。

イタチごっこ。

地方自治体や会社が、膨大な予算を使って

「日本一」

を目指したものを作っています。

『日本一の水車』
『日本一の展望台』
『日本一の水槽』

こういうのを聞くたびに、「やれやれ、またかよ。そんなの意味がないよな」そう思ってしまうんです。

マーケティング的にいうと現代は、一番化を目指すのは間違い

一番というのはあまり意味のないこと。
一番化戦略、地域一番店などなど、昔は有効でした。
たしかにビフォーSNS時代には、効果的な戦略ではあった。
今は、一番化戦略がマイナスに働く時代。

ある温泉街で、あるホテルがやった一番化戦略。
その温泉ホテルは、その地域で一番大きくて、一番施設もよかった。
たくさんの団体客を誘致して、たくさんのお客が来ていた。
そこで考えたんですね、そこの社長。

「ウチにはこんだけたくさんのお客が来ているのに、みんな外に行って、おみやげ買ったり、遊んだりしている。そうか! この客をみんなウチの施設で消費させればいいんだ」

なんと、ホテルの玄関を温泉街とは逆の方向に作った。
たしかにお客さまは、みんなホテルの中で消費するようになった。
戦略は成功しました。
客の消費単価があがり、お客さまも満足した。
他の大きなホテルもその真似をしはじめたんです。
そうすると、どういうことが起こったか?

温泉街に人が流れなくなって
街がすたれてきた。
廃れた温泉街は魅力がなくなる。
そうするとどうなるか?
観光地としての魅力がなくなってしまった。
結果。
団体客も来なくなって、ホテルもドンドンつぶれているんですね。
今はもう、昔の面影はなし。

いいお湯の、いい温泉だったのに。

その点、阿寒湖温泉の『鶴雅グループ』の大西社長はすごい!
北海道の東にある阿寒湖温泉。
ここは国の特別天然記念物「マリモ」が生息していることで有名な地域です。
阿寒国立公園の中にあり、毎年たくさんの観光客が訪れています。
アイヌ文化も有名で、それも観光の売りになっている。
ここにある観光ホテル『鶴雅』は、とっても注目されているホテルです。

阿寒湖の中でさまざまな意味で一番ではあるけど、自分のホテルのことばかり考えているわけではありません。
大西社長は、まず阿寒湖の町のことを考えている。
だってそうしなきゃ、自分のところに返ってくる。
そのことをよくわかっているからです。
町の賑わいをなくさないために、温泉街を魅力的にする活動を率先してやっています。
あるいはアイヌ文化を保護し、それを継承させる活動をすることで、阿寒湖の魅力をより強くしていこうとしている。
阿寒湖をより魅力的にすることが、『鶴雅』にとってベストだということを知っているからです。

戦わないことが、最高の戦略

一番化戦略っていのは結局、

『自分のところが良ければいい。』

という、そんな戦略なんです。
「自分さえよければ、他が潰れたって、誰かが不幸になったって、どうなったってかまわない」
そう言っているようなものです。
あなたはそんな会社の製品買いますか?
そういうのが見えるお店に行きますか?

今の時代は、SNS時代です。
そういうことがすぐに見透かされる。
企業の人柄が重要な時代です。

競争から、協調する時代。
人々は、あなたの会社の態度をじっと見ているのです。

だから競争をするのではなく、独自の価値を創出して、お客さまに選んでもらえるようになるほうが、成功への早道なんです。

「戦わないことが、最高の戦略」

ということです。
お客さまのこころに響くのは、スペックではなく、「体験」なんです。

The following two tabs change content below.
藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

フォローする