洗濯機から考える「ブランド」という“思想”

ブランドは「共感の積み重ね」

最近の洗濯機って、ほんとうに優秀です。
音は静かだし、節水だし、自動で洗剤を入れてくれたりもする。
乾燥までしてくれて、タオルもふかふか。
どのメーカーの洗濯機も、正直なところ「ちゃんとしてる」。

じゃあ、パナソニック、シャープ、アイリスオーヤマ、どれが一番いいの?って聞かれたら、
「どれもいいよね〜」って答える人、多いんですよね。

もしロゴマークが全部はがされていたら、どれがどこの製品かなんて、使い慣れてる人でもなかなか見分けがつかない。
それくらい今の製品って、機能や性能では大きな差がなくなっている。

これが「コモディティ化」っていう現象です。

安さで選ばれる世界へようこそ?

コモディティ化が進むと、どうなるか。
差がわからない商品は、結局「価格」で比べられるようになる。

「こっちのほうが2万円安いから、これにしよう」
「ポイント10倍だし、まあこっちでいいか」

…と、こんなふうに選ばれてしまう。
どんなに想いを込めて作った商品でも、他と“同じように見える”なら、安いほうに流れていく。

つまり、ブランドになっていない商品は、安売りの土俵に上がらざるを得ないってこと。

万年筆はちょっとちがう

でも一方で、「万年筆」っていうモノを考えてみてください。
万年筆ってもう用済み?
文字を書くのなら、100円のボールペンでも、十分に書きやすいものがある。
大体、もう手書きで文字を書くことはなくなっている。
でも、今も、万年筆は地道に選ばれている。
それは、「筆記具」というより、別の何かなんだな。

ペリカン、モンブラン、パーカー、パイロット──
名前を聞くだけで、なんとなく雰囲気が伝わってくる。
「あの万年筆、憧れなんだよね」って語る人も多い。

万年筆って、機能だけじゃ語れない。
書き味、重さ、デザイン、ストーリー。
そこには、そのメーカーの“思想”みたいなものが、じんわりと染み込んでいる。

だからこそ、万年筆は「ブランド」として生き続けている。
コモディティにはならない。

ブランドは、「モノ」じゃなく「関係性」でできている

よく「ブランドを構築する」って言うけれど、
そんなに簡単に“作れる”ものではない。

どれだけ広告で「いい会社アピール」しても、
実際に買った人ががっかりしたら、それで終わり。
たとえば「サービス日本一」と書かれた高級旅館に泊まったら、
スタッフの笑顔がぎこちなくて、マニュアル通りの接客しかなかった──
そんな体験をしたら、「ああ、あの広告はなんだったんだろう」と感じてしまう。

ブランドって、ポスターやテレビCMじゃなくて、「日々の関わり」の中で、じわじわと育つってこと。

あなたの会社にしかない“体験”がありますか?

ブランドって、ある意味、“思想”のようなもの。

それを共感してくれる人がいて、何度も何度も「ああ、やっぱり好きだな」と思ってくれる。
その積み重ねが、「ブランド」になる。

だから、モノを売っているだけでは、ブランドは生まれない。

・接客のひとこと
・お便りに添えた小さなイラスト
・SNSでの、なんでもないつぶやき
・お店で交わす、ふとした会話

そういう、あたりまえの“人間らしいやりとり”が、実はすごく深い価値を生み出している。

モノではなく、体験を売るという視点。
それが、あなたの会社を“安売りの世界”から救う、大きなヒントになるのです。

 

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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