「拡大路線の誘惑」 屏風は広げれば広げるほど倒れやすくなる

広げるより ちゃんと届く

「もっと広げたい」
「拡大しよう」
「フォロワーを増やそう」

そんな声、ビジネスをしていると、あちこちから聞こえてくる。
広げる。スケールアップ。全国展開。海外進出。新店舗。新事業。
成長ってそういうことだよね、って、なんとなく思わされている。

でもね・・・
「ほんとうに、広げることが正解なのかな?」って思うこともある。

いや、もちろん広げること自体は悪くないし、意味もある。
たくさんの人に届いたらうれしいし、夢が広がるのもすてきなこと。

でも──それ、「広げても大丈夫な土台があるか?」ってこと。

広げれば広げるほど倒れやすくなる

あるとき、思った。
「屏風ってさ、ぐっと広げるとバランス崩してパタンと倒れるよね」
ビジネスも同じかもしれないな。って。

広げるのは力がある証拠かもしれないけど、
つながりの深さ”や“信頼”が足りないまま広げてしまうと、
いつかバランスを崩す。

根が浅いまま大きくなると、風が吹いたときに倒れちゃう。
でも逆に、しっかりと深く根づいていると、ちょっとの風じゃびくともしない。

実際に手を広げすぎて、尖った個性があったのに、すごく平凡になった店とか、とても独創的な飲食店だったのに、面白くなくなったとか、あなたの周りにもありますよね。
それだけならいいけど、無理に広げて、倒産してしまった会社は、たくさんある。

それって、背丈に合わない「拡大路線」だったんだろうな、って思う。

深い関係性の中にある、ちいさな感動

たとえば、先日ぼくのセミナーに来ていた、商店街の電気屋さんの社長が話してくれたこと。
その電気屋さん、最新のガジェットや大型家電がズラッと並んでるわけじゃない。
お店のInstagramも見当たらない。

でも、「おばあちゃんのテレビがつかなくなった」って電話一本で、
自転車飛ばして駆けつける。

「昨日のドラマの続き、今日も見たかったの」
って笑うおばあちゃんに、「もう大丈夫。今日は映るよ」って答える。

「エアコンが効かない」って電話があったので、訪ねてみると、リモコンの設定が、暖房のままだった。
「ありがとうね。助かった」って言われることに生きがいを感じる。

高齢の親がいて、最近連絡が取れないので、見てきてほしい。
そんな要望にも応えています。

そんな町の電気屋さんって、もう電気屋じゃないですよね。

売上で言ったら、たった数百円の仕事かもしれない。
でもその町にとって、その人にとって、かけがえのない関係なんです。

目立たなくても、数字にならなくても、
その人がいてくれてよかった”って言われる存在って、ものすごく深い。

広がることはエンジンでも深さはハンドルになる

たしかに、ビジネスにとって“広がる力”はエンジンかもしれない。
でも、“どこに向かうのか”を決めるのは、たぶん「深さ」なんだな。

エンジンばかりふかしても、ハンドルがなかったら迷子になる。
スピードが出てるときほど、方向を見失いやすくなる。

だからこそ、
「広がるかどうか」よりも、
「ちゃんと深まっているか?」を問い続けることなんだと思う。

深まることで広がりは“あとから”ついてくる

深く届いた関係って、やがて広がります。
誰かの記憶に残って、口コミになって、ファンになって、
気がつくと少しずつ広がっていく。

でもそれは、“拡大するぞ!”って気合いで得た広がりじゃない。
あくまで、「この人にちゃんと届いたかどうか」の積み重ね。

「たくさんに届かなかったけど、ちゃんとひとりに深く届いたなあ」っていう日。
それが、なにより“いい仕事”だなって思う。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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