モノを売るというのは、機能を説明することだけではない|SONYの有線ヘッドフォンから考えるマーケティング

AV Watch のニュースから

1979 年のヘッドフォンが復刻

ソニーが、1979年に発売された初代ウォークマンの付属ヘッドフォン「MDR-3」を、現代の仕様で復刻するそうです。

新製品の「MDR-3R」は、当時のデザインを再現しながら、USB-C端子や通話用マイク、リモコンを搭載。イヤーパッドはブルーとオレンジが付属し、価格は8,000円前後で、11月20日に発売されます。

<AV watch のニュース>
ソニー、初代ウォークマン付属ヘッドフォンを再現。USB-C化した「MDR-3R」

このニュースを見て、あらためて思いました。

いまやヘッドフォンは、音楽を聴くための道具だけではないんだな。

最近、若い世代の間で、有線のイヤフォンやヘッドフォンがあらためて注目されています。

若者のトレンドを調査するSHIBUYA109 lab.の「トレンド予測2025」では、有線イヤフォンがファッション・コスメ部門に入りました。
2026年に公表された15歳から20歳の調査でも、4人に1人が有線イヤフォンを使っているという結果が出ているんですね。
ワイヤレスが多数派である一方で、有線を選ぶ人も確かにいるんです。

これはどういうことかと言うと、有線イヤフォンが、音を聴く機能だけではなく、ファッションアイテムとしても見られていることです。

コードを首に垂らして、洋服の一部のように見せる。昔は少しわずらわしく感じたコードが、いまは新鮮なデザインになっている。

便利さだけで考えたら、ワイヤレスのほうが使いやすい場面も多い。
それでも、有線のコードには、目に見える存在感があります。
身につけたときの形や、どこか懐かしい雰囲気も含めて選ばれているってことだと思う。

カセットテープが人気

カセットテープが再び注目されているのも、同じ流れなのかもしれません。

中目黒には、カセットテープやレコード、カセットプレーヤーなどを扱う専門店「waltz」があります。
渋谷PARCOにも、世界各国のカセットテープをセレクトし、プレーヤーやラジカセ、アパレルまで提案する専門店「ODD TAPE DUPLICATION」があります。

音楽を聴くなら、スマートフォンで再生するほうが簡単です。

それでも、カセットテープを選び、プレーヤーに入れて、再生ボタンを押す。
そんなひと手間を楽しむ人がいる。
テープのデザインや、手に持った感触まで含めて、音楽の時間を味わっているってことですよね。

便利さが当たり前になると、便利ではないものに新しい魅力が生まれることがある。

有線のコードも、カセットテープも、ただ古いものだから選ばれているわけではない。
そこにしかない形や手触りがあり、自分の好きなものを表すことができる。
だから、身につけたり、持ち歩いたりしたくなる。

この「MDR-3R」も、1979年のデザインをそのまま懐かしむだけではないでしょう。

当時のウォークマンを知っている人には、青春の記憶を呼び起こすものかもしれない。一方で、当時を知らない若い人には、見たことのない新鮮なデザインとして映るかもしれない。

同じものが、ある人には懐かしく、別の人には新しく見える。

ヘッドフォンは、音を聴く道具からファッションアイテムへ

商品の魅力は、スペックだけでは決まりません。

その商品を身につけたとき、どんな気分になるのか。どんな自分になれそうだと感じるのか。
誰かに見せたくなるのか。
そういうことも、選ぶ理由になっています。

ヘッドフォンは、音を聴く道具であり、自分の好みを表すファッションアイテムでもある。

商品を選ぶ理由は、どんどん広がっています。

音を聴くために買う。デザインが好きだから買う。昔の記憶に触れたくて買う。誰かに見てもらいたくて買う。

モノを売るというのは、機能を説明することだけではありません。

そのモノがある暮らしや、身につけたときの気分まで想像してもらうことなんだな。

 

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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