安売りは「正義」ではない、ということをもう一度確認してみよう。

『商業界』3月号は発売すぐに売り切れ?

ボクが「中小企業のSNS活用」というコラムを書いた経済雑誌『商業界』3月号がなかなか入手困難になっているみたいです。
Facebookで紹介したら、Amazonで即日在庫切れになった。
本当にソーシャルメディアのチカラはすごいです。

その『商業界』の次号4月号にもコラムを書いています。

特集「高くても売れる技術」 
安売り、値引きに頼らずに「価値」で愛される商いへ

その特集の中でボクが書いたコラムは
『安売りしなくても売れる10の方法』
適正価格で買ってもらえる値段以外の「判断基準」の伝え方

昨日が原稿の締め切りでした。
珍しく締切日に提出しました。
ま、ギリギリでしたが(笑)。

そのコラムは、安売りしなくても売れる考え方を10のキーワードで解説しています。
今までどこにも書いていない事例もあります。
さらにその同じ4月号は、あの短パン社長、株式会社ピーアイ奥ノ谷さんのインタビューも載っています。
4月号も売り切れ必至ですね。
お近くの書店やお近くのAmazonに予約しておくと安心ですよね。

さてさて、ボクが書いたコラムで書きたかったけど、誌面の関係で書けなかったことがあります。
今回の商業界さんの特集の主旨とも、ちょっとちがったから。
それは「安売りは悪いこと」と言う話。
その書かかなったコラムです。

ボクが使っている万年筆 もう10年ちかくなるけど紛失しない

ボクが使っている高価な万年筆
もう10年ちかくなるけど紛失しない

安売りするのは悪いこと

「安売り」は悪いことか?
「消費者に安く提供して、何が悪い!?」
そういう声が聞こえてきそうですが、ボクは悪いことだと思う。
正確に言うと、無理な安売り、計画性のない安売り、周りのことを考えない安売り、思いのない安売りは、悪いっていうこと。

「他の店よりも1円でも安くします」
「赤字覚悟のセールです」
「エブリディ・ロー・プライス」
「激安!」

新聞折り込みチラシを見たり街に出て、買い物をしていると、さまざまなところでそういうイメージが踊っている。
安くすることが、あたかも「正義」のように思われている。
でも本当にそうでしょうか?
安売りは正義か?
ボクはそうは思いません。
安売りは「悪い」と思っています。

だって、誰もしあわせにならないからです。
しあわせにならないどころじゃなく、結果的に社会を疲弊させ、人間の生きる力をなくさせる。
安売りというのは、そこまで行きついてしまいます。
安売りが悪い理由は以下の5つ。

1:人件費を削減しようとする
2:利己的な価値観の蔓延
3:消費者も損害を受ける
4:海外の依存率が高くなる
5:地球環境によくない

安売りしなくても、価値をちゃんと伝えて適正価格で売れる方法がある。
独自の価値を創出して、それを正しく伝え、お客さまとの関係性を構築する。
そうしたら、安売りしなくても、買ってもらえるのです。

1:コストダウンのため人件費を減らす

安く売るためには、コストダウンしなければなりません。
一番コストが高いのは人件費です。
企業が安くモノを作るために、あるいは安く売るためには、人件費を削減しなければならない。

結果、ビジネス・パーソンの給料が安くなります。
正社員を辞めさせて、非正規社員を増やしていった。
企業の利益は増えるけど個人の収入は増えない。
そういう状況が何年もつづいています。
人件費を安くするために生産拠点を海外に移したりもする。
海外の工場も、日本企業のコストダウンに応えるために、人件費を減らさなければなりません。
極端なのコストダウンを要求されると、人件費の安い人を使うようになる。
一番コストが安いのはどんな人か?
それは子供です。
10歳くらいの子どもが、1日15時間とか強制労働させられているケースもある。

安い製品というのは、そういうダークな部分の上に成立しているかもしれないということ。
あなたが昨日買った、激安ジーンズの向こうに、誰かが泣いている人がいるかもしれない。
そういうことを、ボクたちは忘れてはいけないのです。

2:利己的な価値観の蔓延

自分だけがよければ他はどうなってもいい、そういう価値観が蔓延する。
ルールを守っていたら、安売りは悪いことじゃない。
確かにそうであるかもしれない。
でも、それは社会性を欠いた企業の論理です。
ビジネスは戦いだから、勝たなければならない。
だから「自分のところだけ売れればそれでいい」そう思っている企業が多い。
だから「マーケティング戦略」「戦術」「戦闘」などの、戦争用語が多用されるんです。
誰と戦っているの?
競合他社よりも1円でも安くしよう。

どこを向いてビジネスをしているのか?
競合他社ばかり見ているんじゃないの?

自己中心的な考え方。
それが、社会にも影響する。
自分だけ良ければ、他はどうなってもかまわない。

そういう価値観が社会に広く蔓延するんです。

利己的な企業がやっていることは、そういうことです。
そういうことをやっていたら、社会的に大きな影響が出るのはあたりまえ。
少年犯罪が凶悪化しているのも、あるいはキレる人が増えるのも、いじめや体罰が隠れて行われているのも。
突き詰めて考えるとそういう価値観が蔓延した結果かもしれない。
企業の安売りが、そういう社会心理と相関していると考えるのは、無理な話ではないと思います。

企業というのは社会的な存在ですよね。
法人。
人間ではない、社会的な人格を与えられているわけです。
社会的な責任もあるんです。
ただ税金を納めていたら、社会的責任を果たしたと思っていたら大間違いです。

ルールを守ってさえいれば、儲けるのは悪くない。
確かに儲けなければ、利益を出さなければビジネスの意味はない。
それは正しいことです。

でも、世の中にはマーケティング的には正解なことだって、やってはいけないこともあるんです。

3:消費者も多大な損害を受ける

安売りするために、
企業は効率化と合理性を追求しなければなりません。
でも、行きすぎた追及は社会にとって、悪になります。
効率性や合理性ばかり考えると、企業もおかしくなります。

航空会社がコストダウンのために、整備をしっかりやらなかったら怖いですよね。
鉄道会社が合理化のために、安全をないがしろにしたら、恐ろしいです。
建築会社が利益を出すために、耐震設計を甘くしていたら、嫌ですよね。
外食産業が製造費を安くするために不衛生な海外の工場で食べ物を作っていたら、食べたくない。

もちろん、日本のほとんどの企業は真面目でしっかりとした会社です。
でも行きすぎた効率化や合理性の果てに、効率化してはいけないところまで効率化してしまう会社だって出てくる可能性もあるわけです。
消費者だって安売りの被害者です。

4:海外の依存率が高くなる

人件費の安い海外に工場を移したり、安い食料品を輸入したり、海外の依存率が高まると危ない。
生産の現場が人件費コストの安い中国などに移り日本の伝統的な職人技が途絶える。
そういうことがさまざまな分野で、現実に起こっています。
これは文化的に言って、非常に危機的なことです。

さらに食糧など、コストが安い海外のものに移行して食糧自給率がついに40%を切った。
危険なことがたくさん起きています。
これでは消費者が被害を受けるわけです。
人件費が安い海外で、安いものを大量に作って、たくさんの人に買ってもらうっていうやり方は、もう通用しない時代になったことを、認識しなければ、いつまでたってもしあわせになれません。

商品や技術を言うのではなく、どういうしあわせなことがあるのか、どんなに素敵な生活があるのか、どんな問題解決ができるのか、そういう価値をしっかり伝えていくことが、ものすごく大切な時代なんです。

5:安売りは地球環境にもよくない

安いものは使い捨てされる。
ゴミの量は年々増えています。

たとえばちょっと前までは、傘は高価なものでした。
今100円以下で売っている。
透明のビニール傘も500円くらいしました。
ジャンプ傘はそれこそ2000円とか3000円くらいした。
今は、どの町にもある100円ショップでけっこう立派なジャンプ傘が売っています。
これだったら、電車の中に忘れても、また買えばいい。
そういう心理になるのは無理もないことです。
以前なら、高い傘をもっていると、大切に使いました。
失くさないように、忘れないように、気をつけたものです。

昔、傘は高価なものだった

昔、傘は高価なものだった

ボクはもう10年以上、筆記具は万年筆を使っています。
1本7万円くらいする商品です。
失くしません。
万年筆を使う前までは、100円のペンを使っていました。
そのときは、しょっちゅう紛失していました。
高価なものは長く大切に使う。
そういうことです。

貴重な資源を使って、大量に生産され、捨てられるモノが増える。
これは地球温暖化や環境にとって悪いことです。

買う理由がわからないから買わない

こう考えてくると安売りは悪いことだと思いませんか。
「安売りは正義ではない」そう定義してみましょう。
あなたが安売りから脱却して、成功するために、そう考え、それとはちがう行動をすることです。
お客さまは別に安いモノが欲しいわけではありません。
高いほうを買う理由がとりたてて見当たらないから、安いほうを買うのです。
しっかりと価値を伝えることが大事なのです。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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