クレームは情報不足から生じる

「あらかじめ」という文化

最近「情報」のことをよく考えます。
情報の本質的な部分は目に見えませんが、情報にはすごい力があります。
今日は「情報」と「クレーム」の関係について書いています。
以前にも書いたことのあるコンテンツなのですが、「情報」捉えてみると、面白いと思ったのでリライトしてみました。

日本には「あらかじめ言っておく」という文化があります。
あらかじめ言っておくと、相手も安心するし、突然にモノゴトが起きても、あらかじめ予想しているから、驚きません。
これは、とっても素晴らしい文化だと思う。

たとえば、おもたせを持っていき、訪問先でお渡しするときに、あらかじめ言います。
「つまらないものですが」とか・・・。
これは謙遜して言っている場合がほとんどだと思います。
でも、ちがう見方をしてみるとこれは、あらかじめ言うことで、本当につまらないものでも、クレームにならないということ(笑)。
あらかじめ「つまらないモノ」ですと言っていて、本当につまらないモノだったらクレームになりません。

あらかじめ言うことで、後々クレームにならないってことです。
だからお見合いの時も、あらかじめ写真を渡しておくわけです。
振込み詐欺だって、あらかじめ言っておいたら犯罪にならない。(ん?)(笑)

ということは、あらかじめ言っておけば、クレームは極端に減るということですよね。
たとえば、「配達はしません」と言っておけば「配達してくれないなんていまどきおかしい」というクレームはなくなるんです。
クレームは誤解から生じ、誤解は情報不足から生まれる。
そういうことです。

当たり前と思っていることを先に知らせる

以前のボクのお客さまで、ランドセルを製造販売している会社があります。
メイドインジャパンと日本の鞄職人にこだわった手作りランドセル。
もはやランドセルのブランドになっている商品です。
ここの直販店では、ランドセルのラッピングはしませんでした。

すると、ランドセルを買ったお客さまから「ラッピングしてくれない」というクレームがけっこう多く届いた。
そこで、レジの近くにわかりやすく、こう書きました。
そうしたら、クレームはゼロになりました。

「ランドセルは特別な商品ですので、ラッピングはしません。そのかわり特別な化粧箱でお渡ししています。」

あらかじめ言っておくと、クレームは減ります。

しっかりと伝えたら誤解は起きない

ボクのお客さまに、大きな温泉旅館がありました。
そこの温泉は名湯といわれている温泉です。
露天風呂と内湯があり、メインの内湯はとても大きい。
岩風呂で大きな窓に向かっている横長のお風呂です。
窓の外はみごとな落葉樹の森。
たくさんの人が、お風呂にはいりながら、窓外の四季折々の木々を楽しめます。

湯船の窓に向かって左側に源泉が出ている湯口があり、大量の源泉が滝のように流れています。
源泉の近くは熱いお湯。
中間は普通の温度。
源泉から離れたところは、ややぬるめのお湯。
自分の好みで入れます。
ところがこの温泉旅館、お風呂のクレームがものすごく多かった。
どういうクレームかというと、
「お風呂がぬるすぎる」
「お風呂が熱すぎる」
そういうクレームです。

しょっちゅうあったクレームをゼロにした方法があります。
完全にそのクレームがなくなったカンタンな方法。

「43°熱め」
「41°やや熱め」
「39°ややぬるめ」

という、見やすい木製の看板を出しただけです。

あと温泉旅館で、意外と多いクレーム。
それは露天風呂でのこんなクレーム。

「お湯に虫が入っていたんですけど」
「湯船に葉っぱが浮いていたんですけど」

露天風呂に虫や葉が入っているのが嫌だったら、露天風呂に入らなきゃいいと思うんですけど、こういうクレーム意外と多い。
露天風呂ですから、虫の一匹や二匹、葉っぱ数枚、入っているのはあたりまえです。

「虫さんも、葉っぱさんも、○○旅館の温泉が大好きです。もし入っていたら、そっとこの網ですくってあげてくださいね」

クレームを少なくするためには、あらかじめお客さまに、たくさんの情報を届けておくことが重要。
あらかじめ、ということポイントです。

うちはこういう店です
うちはこういう旅館です
うちはこういう会社です
これはこういう商品です
このサービスはこういうサービスです

ということを伝えておくことです。

あらかじめ情報を出すことによって、無くなるクレームもあります。
あなたのところに届いているクレームの中には不当なクレームがあるかもしれません。
でもそれは、もしかしたら、あらかじめ情報を出していないことによって生じた、誤解のクレームかもしれない、と考えてみましょう。
情報というのは、たくさん出しているつもりでも、意外と出していないものなのです。

ほとんどのクレームは「誤解」で生じ、「誤解」は「情報不足」から起こる。
だから、クレームを減らすためには、あらかじめたくさんの情報を提供しておくことが、重要なのです。
そして、あらかじめ情報を出すということは、相手を思いやる気持ちにもつながるのです。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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