常識っていうのはもう非常識になっているかもしれないー業界の常識に囚われない、印鑑屋『一心堂印房』

モノではなく、コトを訴求して成功したチラシ

昨日、愛知県で講演をしました。
その講演を企画してくれたのが、愛知県の岡崎市の「一心堂印房」というハンコ屋さんの神道社長(ニックネームはあきパパ)。
神道社長もボクの塾生さんですが、社員の方々もたくさん塾に送り込んでくれています。

岡崎市を中心に7店舗を展開しています。
他にインターネットでの店舗も運営している。

このハンコ屋さん、通常のハンコ屋さんとはちがい、常識に囚われないことをたくさんやっている。

神道社長、2代目ですが、今年から息子さんが戻ってきて、3代目の修行をしています。
またこの息子さんが面白い。
13年間、お笑い芸人をやっていた人。
吉本にも所属していたこともあったり、地方のTV局で自分の番組をもっていたり、活躍していた人です。
今は修行中ですが、今後、彼のYouTubeとかでの発信を考えているそうなので、楽しみです。

業界の常識に縛られない、本当に面白いことをやる会社だなって思う。
たとえば、「実印」をハンコというモノではなく、コトとして伝えて成功したチラシがあります。
これはとっても効果があって、毎年春になると、このチラシと広告で、実印が売れているそうです。

普通ハンコ屋さんっていうのは、厳しい安売り競争に巻き込まれているところが多い。
従来のハンコ屋さんのチラシっていうのは、ハンコがずら~っと並んでいるタイプのものがほとんどです。
定価が書いてあって、それに大きくバツがしてあり、そのあとに大きく特価の金額が書いてある。
安さだけしか訴求していない。

結果、ハンコというモノしか売っていない。
このハンコ屋さん、「実印」を「モノ」ではなく、「親と子の絆」という「コト」にして訴求しました。

ちょっとほのぼのとした、イラストが描いてある。

モノをコトにしたチラシ

モノをコトにしたチラシと新聞広告

キャッチコピーが目を惹きます。

「知っていましたか?」

人間は知らないことに興味があるってことです。
そしてそれに続いて、実印のエピソードが載っています。

あるお客様から聞いたお話です。
「二十歳になった記念に父から実印をプレゼントされました。今でも大切に使っています。人生の節目、節目で実印を押すたびに、『人に迷惑をかけるな、自分に責任を持て』という父の言葉を思い出し気が引き締まります。」と…
思い出の品はこんなにも親子の絆を深めてくれるんですね。

実際に本当にこういうお客さまがいたんですって。
実印を押すときって、いろいろな意味で人生の決断のときです。
だから、それを押すたびに、親を思い出すって。

「実印」を「実印」として売っていたら、競争も激しくなります。
結果、不毛な安売り競争に巻き込まれる可能性が大きくなる。
でも「実印」を「モノ」ではなく、「親と子の絆」という「コト」にして訴求したわけです。
実印を売っているのではなく、家族の絆を強くするためのお手伝いをしている、ってことです。
同じ商品を売っていたとしても、言葉の使いかたで、まったく意味合いがちがうものになるのです。
結果、実印の売上が、対前年同月比、135%アップしたのです。
「コト」を売ることによって、結果的に「モノ」が売れるのです。

お客さまを選ぶという姿勢

『一心堂印房』のインターネット店舗で成功した事例です。

ボクはよくアドバイスで言うことがあります。
「お客さまを選びましょう」
そういうこと。

あなたの発信に共感してくれたお客さまだけ相手にするという姿勢。
お客さまを明確にすると、安売りの不毛な競争から抜け出すことも可能になります。

インターネット店舗というのは、安売りになりがちです。
インターネットっていうのは、カンタンに価格比較ができますからね。
この『一心堂印房』のインターネット店舗も安売りしていました。
するとどういうことが起こるかというと、実店舗で販売する商品と、インターネットで販売する商品の価格に差が出てきた。
同じ商品なのに、インターネットで買うと安いわけです。
そのうち、インターネットの世界で、印鑑がドンドン安売り競争になっていきました。
このお店も、一時期は実店舗とインターネットの店舗の差が半額近くまでになってしまった。

これじゃ、不公平になる。
そう思った、社長。
インターネット店舗の商品を値上げして、実店舗と同じ価格にした。

「価格で印鑑を選ぶお客は、ウチの客ではない。」

そういう覚悟をしたんですね。
まさにお客さまを選んだ。

ネットショップの印鑑のページは見事です。
参考になりますから、ぜひみてください。
<これです>

「知っていましたか? 心はこめるものではなく、自然にこもるものなのです」
そして、みごとなストーリーが展開していきます。
こんな感じです。

印鑑
印鑑をどう選びます?
こんにちは!!
ウェブマスターの橋本と申します!
この度は一心堂インターネットショップに訪問くださいましてありがとうございますm(__)m
あなたとの出会いに感謝です。
さて、あなたが印鑑屋のホームページにアクセスしているということは、「あなた」もしくは「あなたの大切なひと」が人生の大切な日を迎えられるということではないでしょうか?
印鑑は、結婚、誕生、卒業、就職、成人、お家の購入、etc. 様々な節目で必要になりますよね。
あなた、もしくはあなたの大切なひとが、とっても大切な日に使用する印鑑を値段だけで選ぶという方は、これ以上読んでいただく必要はありません。
下の検索ボタンを押せば、安い印鑑がたくさん見つかると思います。
ここまでお付き合いくださいまして、どうもありがとうございました。

【印鑑 安い】検索
(ここに、印鑑・安いとキーワードがはいったヤフーの検索ボタンがついている。)
あれ……。
まだ読んでいただけています?
改めましてありがとうございます!
それでは続けさせていただきますね♪
印鑑は人生の大切な場面で使用します。本人の意思を書面に残します。とぉ~っても大切なものなんです。また、一度購入したら買い換えることなく一生使用することが多いので、購入の際にはしっかりじっくり検討するべきなんです。
各ページでは私ウェブマスター橋本が、実印、銀行印、認印、それぞれの印鑑選びについて熱く語っております。私の大切な家族や友人が印鑑を作る際、私はどう説明し、どの印鑑を勧めるのか、そういった観点から説明しています。ちょっと押し付けがましい部分もありますが、より良い印鑑選びをして頂きたいので本気&本音で語っています。
それから、とっても大切なことなんですが…
一心堂の職人は心を込めて印鑑を彫り上げます。
でも…
「心を込める」とはどういうことなんでしょう?
想像してみてください。
あなたが大切なひとのために料理をしたとします。喜んでもらおうと、相手の顔を思い浮かべながら作るのではないでしょうか。
そうすると自然に心がこもるんです。
それに対して、誰が食べるのか分からない食事を作るとしたらどうでしょう?
心を込めることって意外に難しいと思いませんか?
当店の印鑑注文ページには、「どなたがどんな大切な日を迎えようとしているか」を記入する欄があります。
職人はあなた(あなたの大切なひと)を思い浮かべながら、その大切な日を思いつつ、印鑑に魂を
たとえお互いに顔が見えなくても、本当に心のこもった仕事をしたいという強い思吹き込みます。いがあります。
印鑑を通じて、
『あなた(あなたの大切なひと)の大切な日のお手伝いをさせて頂くこと』
それが私たちの仕事です。

 

この展開をしてから、注文数は減ったそうですが、売上は同じくらい。
でも、利益は圧倒的になった。
仕事量が半分になって、利益が前よりも良くなったわけですから、これは企業にとっていいことです。
さらに、発注数が徐々に戻り、1年もたたないうちい安売りしていたときよりも多くの注文がはいるようになった。
安売りから抜け出した。

さらに、ウェブマスターの橋本さん(ニックネーム、ホワイティ)が笑顔で語ってくれました。
「お客さまが、どういう動機で印鑑を買おうと思っているのかを、熱く書いてくれるようになったんです。中には写真を添付してくれるお客さまもいて、それがとてもうれしいんです」

一見、お客の顔が見えないインターネットショップでも、お客さまと人間的な関係性をもてるようになった。
このページを見た、ニューヨーク在住の日本のお客さまからも注文が来たり、有名な芸能人の事務所から依頼があったり、たくさんのいいお客さまが買ってくれているんです。
お客さまを選ぶことによって、一心堂の印鑑は価値が高まったわけです。

おおげさに言うと「ブランド」になった。

よくブランド化しようと、いろいろな会社が、さまざまな工夫をしていますが、この部分がとっても難しいんです。
ついつい、安くしてもっとたくさんのお客さまに買ってもらおうと考えがちですが、そういうことを考えなかった。
たくさんの顔の見えない客に買ってもらうより、価値を認めてくれたお客さまに買ってもらう。
ブランド構築には、この覚悟が必要なんです。

お客さまを選ぶと、お客さまからも選ばれるようになる。
「思い」を伝えると、お客さまは素直に返してくれる。
そういうことです。

昨日、ひさしぶりに神道社長とあって、いろいろと思い出しました。
まだまだ、やれることって、ありますよね。
チャレンジし続けましょう。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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