森がきれい、湖がきれい。
──それだけじゃ、人の心は動かない。
アドベンチャー・ツーリズムのマーケティングにおいて、
いちばん大切なのは「どんな場所か」じゃない。
「誰と、どんな時間を過ごすか」を提案できるかどうかだ。
アドベンチャー・ツーリズム──自然体験のマーケティングに必要な「関係性思考」について、ちょっと思ったことを書いてみた。
なぜ「施設紹介」だけでは心が動かないのか?
リゾートのパンフレットには、「絶景」も「高級施設」も、たいていきれいに載っている。でも、現代のお客さんは、それだけでは心を動かさない。
なぜなら──
絶景も、施設も、いくらでも代替できる時代だから。
スマホで検索すれば、似たような湖も、温泉も、宿泊施設も、すぐに見つかる。
だから、伝えるべきことは、
「この場所で、誰と、どんな時間を過ごすのか?」
というストーリー設計なんです。
アドベンチャー・ツーリズムに必要な「関係性思考」とは?
関係性思考とは──
「場所」ではなく、「時間」と「関係」を提案の中心に据える発想。
たとえば。
・親子で一緒に朝靄の中をカヌーで進む時間
・恋人と夜の焚き火で静かに語り合う時間
・会社の仲間と森の中で迷いながら協力する時間
主役は「景色」じゃない。
“そこで生まれる関係”が主役なんです。
「関係性思考」の提案はこう変わる
■ダメな例(場所主役型)
「この湖は透明度が高く、自然が豊かです!カヌー体験もあります!」
→場所やアクティビティの説明だけ。心が動かない。
■いい例(関係性主役型)
「家族みんなでカヌーに乗って、誰が一番まっすぐ漕げるか競争してみませんか?
きっとあとで『パパ、めちゃくちゃ下手だったね!』って笑い話になります。」
→「誰と、どんな時間を過ごすか」を具体的にイメージできる。
こうやって、場所を「舞台」に、そこに生まれる人の物語を提案する。
これが関係性思考です。
関係性思考を身につける3つの質問
提案を考えるときは、ぜひこの3つの質問を自分にしてみてください。
①「この体験で、誰と、どんな関係が深まるだろう?」
→家族、恋人、友人、同僚、誰との物語を描くか?
②「この時間で、どんな感情が生まれるだろう?」
→感動、笑い、驚き、安心、挑戦、達成感…
③「この旅のあと、どんなふうに語り継がれるだろう?」
→思い出話になるか?誰かに紹介したくなるか?
この3つを意識するだけで、あなたの提案は格段に深く、心に届くものになります。
関係性を設計
森も、湖も、焚き火も、アクティビティも、すべては「人と人とをつなぐ舞台」にすぎない。
アドベンチャー・ツーリズムの主役は、施設でも、絶景でもない。
そこで交わされる言葉、
そこで生まれる笑い声、
そこで育まれる小さな絆──。
関係性を設計するマーケティングへ。
あなたの提案が、誰かの人生の「宝物の時間」になるかもしれません。

藤村 正宏

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