大人気の子供写真館
子供写真館のスタッフには、幼稚園の先生や保育士の資格を持った人も多い。
それもすべて「体験」を売ることを第一に考えているからなんです。
以前の記事で、こだわりだけではもう売れないってことを書きました。
【「こだわった商品」はもう売れない。それはスペックだから。】
そういうことを如実に物語っているのが、写真館業界です。
今、全国チェーンの「子供写真館」が業績を伸ばし続けています。
日本で一番の大手チェーン、「スタジオアリス」。
ボクのクライアントであるカメラのキタムラがやっている「スタジオマリオ」。
どちらも、とっても業績がいい。
これは、今までの写真館が「写真」を売っていたのに対して、子供写真館は「思い出」を売っているから。
「チェーンの子供写真館なんか、ウチに比べたら技術のクオリティが低いから心配ない。だって、ウチが撮る写真はすごくこだわったものなんだから」
子供写真館チェーンが登場したとき、個人写真館のオーナーがいっていた言葉です。個人の写真館のほとんどが、そういうふうに甘く見ていた。
でも、そういう個人の写真館がどうなっているかご存じですか。
ものすごく苦戦している。廃業したところも、たくさんある。
確かに子供写真館の撮影技術は、長年やってきた個人写真館の技術より劣るかもしれません。
普通の人が、数カ月の研修で撮影技術を習得し、それで展開している業態なのですから、それは当たり前です。
でもデジタルカメラの質がよくなったから、ちょっと勉強するだけでプロの写真が撮れるようになった。だから、撮影技術の差がわかりにくくなったんです。
子供写真館の撮影技術はそんなに高くないかもしれませんが、プロが使うカメラや照明を使うことで、その技術をカバーする。
大事なのは、子供たちを楽しませ、自然な笑顔をたくさん撮影すること。
そっちのほうに主眼を置いているのです。
だから、子供写真館のスタッフには幼稚園の先生だった人や、保育士の資格を持った人がたくさんいます。
さらに特別な衣装をたくさん揃え、何度着替えしても無料になっている。子供たちは、いろいろな衣装を着て撮影します。とっても嬉しいことですよね。
撮影している時間も、思い出にしてあげたい。
子供写真館は、写真を売っているのではなく、七五三やお誕生日、入園入学などの思い出の価値を高めている業態なんだということ。
これもモノを売るのではなく、「体験」を売っているのです。
商品の質や価格だけでは選ばれない時代
もう「こだわり」だけじゃやっていけない時代なんです。
そして、これは写真館だけの話じゃないってこと。
小売店も通信販売もメーカーも「こだわり」だけじゃ、ダメだってことです。
「こだわらなくてもいい」、そういうことをいっているわけではないんですよ(念のため)。
こだわったほうがいいに決まっています。
それは製品の質を上げるってことですから。
メーカーや店にとって、商品の質を上げることは、消費者にとってもいいことです。
でも、ただこだわっているだけでは、もうやっていけないってこと。
これからは、「こだわり」というのは、当たり前になって、買う理由にはならないってこと。
このことを忘れないでください。
プロの技術にこだわるあまり、お客さまが本当に欲しいものを見落としていないかを考えてみること。
そして、あなたの商品、サービス、店がお客さまにどんな「体験」を提供しているのか。
大きく考えること。
エクスマの方程式を思い出してください。
以下に自分の商品やサービスを落とし込んで考えてみる。
お客さまは商品が欲しいわけではない。
〜したいのだ。
それで、〜な生活を手に入れたいのだ。
たとえばあなたがタイヤメーカーだとします。
お客さまはタイヤが欲しいわけではない。
安全なクルマに乗りたいだけなのだ。
それで、クルマで移動できる、素晴らしい人生を手に入れたいのだ。
と考えると、あなたのタイヤメーカーは、タイヤを売っているのではなく、「クルマで移動できる素晴らし人生を支援している会社」になるわけです。
そうしたら、タイヤだけが商品ではなくなる。
クルマで旅行する時の支援。
たとえば「レストランガイド」なども商品になるかもしれないってことです。
これって、ミシュランというタイヤメーカーのことを言っているのですけど、伝わったかな?
世界的に権威のある「ミシュランのレストランガイド」は、そういう理由で、発行されているんです。
モノ(商品・サービス)にこだわらないで、広く自分の事業を見渡してみましょう。
藤村 正宏
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