自動思考をしていると時代に合わなくなる

自動思考の落とし穴

ビジネスがなんとなくうまくいかない、競合と比べると個性がない、売上や集客が少しずつ減少している。
もしそういう問題があるのなら、それは「自動思考」が原因かもしれません。

今「自動思考」が企業の業績を悪くしている。
常識的に考えてしまう。
自分の思考を何の疑問ももたずに、あたりまえに判断する。

こういうのを「自動思考」といいます。
今日はこの「自動思考」の落し穴のことを書きます。

最低の立地で高価なものを売っているのに繁盛している店

都心のホテルのラウンジでもなく、銀座や赤坂でもなく、コーヒー1杯、1000円もする店がある。
東京から約40キロ離れている八王子の郊外にある。
とっても繁盛している喫茶店。
いつもいっぱいの駐車場から、それはうかがい知れる。

近くに駅はない。
立地は最悪。
時々、バスが通るくらい。
クルマがなければ、来店できない。
そんな場所でもう20年間以上も商売をやっている。

八王子市の鑓水にある
『パペルブルグ』
というコーヒー専門店。

パペルブルグ

パペルブルグ

コンサート・キャフェ『パペルブルグ』のウェブサイト

自家焙煎のコーヒーはサイフォン仕立て。
ブレンドはもちろん、アイリッシュやトルコなど、コーヒーのメニューの数なんと100種類以上。
コーヒーにお酒が沿えてあるメニューもあります。
コーヒーが苦手で普段は紅茶を注文するような女性も、ここでは必ずコーヒーを飲んでいる。

店はヨーロッパ中世の城をイメージして作ってあって、柱は新潟の農家の廃材を柱や梁に使い、壁にはフレスコ画が描かれています。
椅子も、オーナーが居心地よく過ごしてほしいということで、大きめに作ってある。
トイレもちょっと凝ったつくりになっていて、照明などもいい感じ。
女性用トイレは男性用よりゆったり作っています。

そしてうれしいことに、深夜まで営業していて、仕事が終わったあと、ゆったり過ごすことができるんです。
ボクはコーヒー好きなので、深夜にコーヒーを飲めるお店を探すことが多い。
遅くまでやっているバーなどで、「コーヒーありますか?」と聞くと 、「コーヒー出しちゃうと儲からないんだとね」と言われてしまうことがある。

この『パペルブルグ』というコーヒー屋さんは、コーヒーという「モノ」を売っていません。
ちがう「コト」を売っている。
今はコンビニの100円くらいのコーヒーでもおいしい。
いいコーヒーマシーンがあるから、バイトの子でも美味しいコーヒーを作れます。
でも、コーヒー1杯を売っているという感覚では、車にのって山を越え、都心から高速を使ってまで来てはくれません。
コーヒーを売っているのではないってことです。

他で味わえない
ゆったりとした空間
それぞれの豊かな時間
芳醇なコーヒーの薫り
そういうものを提供しているというのであれば、比べようのない価値があり、わざわざ行きたくなるわけです。

駅前立地の幻想

今「自動思考」が企業の業績を悪くしている。
何十年も同じようなことを、同じように繰り返している。
そんなやりかたで、わかったと思い込んでいるから、いつまでたっても、ダメなんだな。
そういう自動的な思考が、時代に合わなくなってきているってことです。

完全に時代は変わってしまった。
この『パペルブルグ』も、自動思考ではできない店です。

以前は、商売するのなら、人通りの多い、駅前がいちばん。
そういう考え方が常識でした。
でも、今は一概にそんなことは言えなくなってきている。
必ずしも、たくさんの人が集まる場所に出店すると成功するとはいえない。
駅前に店を出しても、つぶれる店があるわけです。
逆に、こんなところで商売なんてできるのかぁ?
そう思ってしまう立地の悪い店が、何十年も繁盛をつづけている。
わざわざ探して来店しなければならない店や、不便なところにある隠れ家のようなレストランが、成功している。
そう、
『駅前立地の幻想』
ってこと。

いまだに駅前のような繁華街に出店したがる考え方が、何の疑問もなく、自動的に思考されるとしたなら、あなたはかなりやばいことになっている。
『時代遅れ』の思考回路になっている可能性があります。
自動思考は危険です。

不便な立地なのに繁盛している秘訣は

どうして繁華街の不特定多数のひとを相手にしている店よりも、こういう不便なところにある店が人気なのでしょうか?

それは『関係性』なんです。

関係性を深めているってことです。
同じ商品を買う場合、お客さんは、関係性の深いところから買うんです。
便利だから買うわけじゃない。
安いから買うわけじゃない。
嫌な店員がいる店より、感じのいい店員がいる店で買う方がいいに決まっている。

不特定多数のひとを相手にしている店よりも、ひとりひとりのお客様の顔が見えている距離感の店のほうを選ぶんです。
理性や便利さで店を選んでいるわけじゃないんです。
好き嫌いという、実に感情的なことで選んでいるんですよ。
長い間、流行にとらわれず、マスコミの紹介も断り続け、圧倒的に繁盛している、そういう店です。
お客さまとの関係性を深めている店や企業です。

そして『関係性』というのは、商品やサービス、つまり「モノ」だけでは作り出せないということなのです。
いつまでたっても「モノ」を売っている意識から抜け出せない人はぜひ、八王子にあるこの『パペルブルグ』に行って、1杯1000円のコーヒーを体験してみてください。
いつまでも「モノ」を売っていては、あなたは永遠に安売り競争から抜け出せません。
『はたらけど はたらけど猶わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る』
<石川啄木>
そういうことになってしまうんです。

一刻もはやく、「モノ」を売っている意識を捨てましょう。
「コト」
「意味合い」
「新しい生活」

そうです、「体験」を売らなければ、これからの繁栄はないのです。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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