成熟化した消費社会では遠近法で考える

成熟した消費社会の生活者

現代の消費者は、これまでのように、一筋縄ではいきません。

商品はもう飽和状態。
消費者は満腹状態。
いま、消費者が欲しいと思っているものは、一通りいきわたっています。

古き良き時代のように、新製品が出たら、新店舗ができたら、注意を向けてくれる。
そんなのんびりとした時代ではないのです。
情報が膨大で、それを追うだけで精一杯なんですから、ただ情報を発信しても、気づいてもらえません。

だいたい今日本で売っている商品は、みんな質の高い、素晴らしい商品ばかりです。
粗悪品なんて、ほとんど出会わない。
コンビニで売っているチョコレートだって、家電量販店で売っているドライヤーだって、みんな素晴らしい商品です。
ただ問題は、みんなクオリティの高い、素晴らしい商品だってことです。
その差がよくわかならない。
どこにだって、似たような商品だということです。

個性のない商品で溢れかえっています。
どこで買ったって、どれを買ったって、同じってこと。

そして多くの消費者がそれを知っています。
でも、企業は「うちの新商品はこんなに他より優れている」「他にはないこんな素晴らしい特徴がある」って、いまだに、声を大きくして言い続けている。
「あ、どうせ企業が言っていることだからね」
右から左に、流しているのです。
企業が発信している情報は真剣になんて見てもらえない。
買って、買って、という広告や販促は嫌われている。

そもそも、情報が爆発的に増えているのですから、消費者があなたの販促や広告を見るなんてこと自体、難しくなっている。

出会わないから見てもらえない。
見てもらえても、迷惑がられる。

TVに代表されるマスメディアもそうです。
少し前の友人の投稿にありました。
「TVのニュースは暗く悲しいニュースばかり。気持ちが沈んできたので、友人を誘って、地元で一番好きなお店で美味しいものを食べることに・・・」
TVを見たくないって人も多い。
報道は、悲劇的な事件や事故、争いごと、犯罪や災害のことばかり。
バラエティ番組もよく差がわからないものが多い。
ボクも考えてみたら、出張中のホテルでも自宅でも、ほとんどTVは見ていない。
スマホやPCで、FacebookやTwitter、ブログなどを見ていることのほうが多い。

情報を見てもらえない時代に唯一見てもらえる情報

企業の発信は見られない。
マスメディアも見られない。
企業にとっては、かなり厳しい状態です。
そしていずれ、それがもっと厳しい状態になる。

でもね、企業の発信する情報や、誰に発信しているのかわからないマスメディアの情報は見たくないけど、関心をもって見たくなる類の情報が、ひとつだけあります。
それは何か?

友人や知人が発信している情報です。
これに関しては、見る。
どうしてかというと関心があるから。
距離が近い人が、何を考えて、どんな行動をしているのかは関心ごとなのです。
たとえそれが、まったくくだらない情報だとしても。
Facebookの自分のニュースフィードに、次々と友人知人の情報が流れてくる。

「あの映画を観に行っている」
「 北海道に家族旅行している」
「お昼ご飯は、自由軒のカレー食べている」

などなど。
そんな取るに足らない情報でも、いいね!したりコメントしたりする。
北朝鮮と韓国の一触即発の問題や、世界同時株安のニュースは興味はないけど、友達が昼ごはんに誰と何を食べたのか、のほうが関心あるわけです。
スマホ上に次々と流れてくる友達の情報は次々とみながら、いいね!という反応をする。

たとえば、今日ボクは故郷の釧路に来ています。
昼間、塾生さんたちと、ボクが高校生の頃、40年以上前によく通っていた『仏蘭西茶館』という喫茶店に行ったことを、チェックインして、投稿しました。

40年前から変わっていない、釧路の喫茶店。
高校生の頃良く通った。シャンソンが流れている。セリーヌやサン=テグジュペリのフランス文学の文庫本を持って来ると、いい。
地下にあるから、籠り感がよかった。
まだ営業している。釧路に来たら寄ってみて。

Posted by 藤村 正宏 on 2015年8月22日

その投稿の500以上のいいね!がつき、10以上のコメントがありました。
ということは、『仏蘭西茶館』という喫茶店の名前を500名以上の人が目にしたことになる。
記憶しているかどうかは別にして。
そして、そのうちの何人かは『仏蘭西茶館』に行くかもしれない。
そういうことです。

人間は無意識のうちに遠近法で思考する

遠近法って知っていますよね。
絵でいうと、遠くのほうはぼかして、手前のほうはしっかり画く技法です。
実は人間の思考も遠近法なんだと思うんです。
どういうことかというと、人間は、近いものに、より深い愛情を感じたり、より深い関係性を築きやすいってことです。
だから、遠い存在の企業の情報よりも、身近な友人や知人の情報を見るし、信じるってことです。

ということは、これからの企業は、お客さまと「友人・知人」にならなければ、選んでもらえないってこと。
お客さまと近くならなければ駄目なんです。
近くに来るような会社、お店になっていかなければならないってこと。
いかにお客さまに近づくが大切です。

そのためには、SNSが有効になってくるってこと。
FacebookやTwitter、YouTubeで発信することで、関係性を構築して、生活者の友達になること。
これができたら、企業としては強いです。
友達までいけなくても、まずは知人から始めましょう。
知り合いになることが大事です。

だから一方的な発信ではなく、常に自分の会社や商品が、ソーシャルメディア上で、どう語られているのかを注意深く見て、しっかりとコミュニケーションすること。

「つながりの経済」になったことを、自覚しましょう。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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