ジャズタクシーは独自化を極めた|独自化するための3つの考え方

独自化するための3つの考え方

札幌のセミナーのテーマは「差別化するな!独自化しよう!」でした。

今の時代、差別化とか言っている場合ではないということ。
競争とか競合とかいう概念がなくなるくらい、独自化することが大事です。
そういう思いで、独自化するためのヒントをたくさん伝えました。

札幌エクスマセミナー

独自化するための3つの考え方

1:商品で独自化
 商品やサービスの意味合いを変えてみる

2:個を出して独自化
 個人というのは他にはないその人だけの個性
 個を発信する

3:好きを組み込み独自化
 好きなことに徹底的にハマる
 常識の範囲で考えない

 

差別化ではなく独自化の思考になったのは、10年くらい前の、一台のタクシーとの出会いでした。
本当に驚くような個人タクシーです。
残念ながら数年前に、運転手さんが高齢ということで引退してしまい、今は体験できないのですが、今でもこのタクシーの話は、たくさん気づきがあると思う。

驚異の独自化 安西タクシー

東京に何台のタクシーがあるか知っています。
東京のタクシー台数 は法人タクシーと個人タクシー合わせて45000台くらいなんですよ。(平成27年3月)

これだけたくさんのタクシーが走っている東京で、どうしてもこのタクシーじゃなければダメだという、圧倒的に支持されているタクシーがあります。
わざわざそのタクシーに乗るためだけに、大阪や九州、北海道から上京する人がいるのですから。
それだけではなく、ニューヨークのマスコミにまで紹介され、
「どうせ東京に行くのなら、一度は乗ってみたいタクシー」
というふうに、海外からも乗りにくる。
そういうタクシーです。

あなた、信じられますか?
どういうタクシーなんでしょう。
実はボクも体験しました。
その「独自化」といったら、それはもうみごとです。
こういう体験でした。
想像してみてください。

ある秋の金曜夜、午後8時。
場所は東京、外苑前にあるスターバックス本店。
あなたはここでガールフレンドと待ち合わせしている。

「今日は、絶対に車に乗ってこないでくださいね」

ガールフレンドからそう言われて、あなたは仕事帰り、電車を使ってこの店までやってきた。
彼女はいつもの笑顔で、待っていた。

「ねえ、どうして車に乗って来ちゃいけないわけ?」
「うふふ・・・それは内緒」

いつものように、お互いの仕事の話なんかをしているうちに、彼女が時計をみて、ちょっと電話をかけてきますね、と席を立つ。
午後8時30分。
席に戻ってきた彼女。
「そろそろ行きましょう」
あなたたちはスターバックスを出る。
空気が澄んで、気持ちのいい秋の夜。
どこに行くでもなく、店の前の歩道に立つ彼女。
すると、ふたりの前に一台の個人タクシーが停まる。
「これです、乗ってください」
わけもわからずにそのタクシーに乗るあなた。
乗り込むといきなりヘレン・メリルの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」が流れている。
それもとってもいい音で・・・。

「こんばんは」
短い白髪の、髭が白い運転手さんが、挨拶をする。
一見普通の個人タクシーだ。
挨拶を交わすと、タクシーは都心に向けて走りだす。
すると、BGMがヘレン・メリルからちがう女性ボーカルに替わる。
『ハッピバースディ・トゥ・ユー・・・』
マリリン・モンローがケネディ大統領の誕生日に歌った、あの有名な曲。
それと同時に、ガールフレンドと運転手さんが歌い出す。
「ハッピバースディ・トゥ・ユー、ハッピバースディ・トゥ・ユー・・・」

そうこのタクシーは、彼女が用意してくれた、あなたへの誕生日プレゼントだったのだ。

 

実はこのタクシーは、安西さんという方がやっている、個人タクシー。
世界でただ一台、真空管アンプを搭載した、

『ジャズ・タクシー』

なんです。
いや〜、これは本当に驚きでしたよ。
ジャズに徹底的にこだわった、個人タクシーなんです。
BGMがすべてジャズ。
もちろん、音にもこだわっています。
車のトランクには、真空管アンプが積んであります。
タイヤも、音があまりしないように、特別なタイヤ。
車両も、ボディが国産車よりも厚くなっているという理由から、韓国のヒュンダイを使っています。
後部座席にある雑誌はもちろん「スイングジャーナル」などのジャズ雑誌や、「ブルーノート東京」のパンフレット。
ジャズ好きにはたまらないタクシーなんです。

ボクが体験したのは、このジャズ・タクシーのメニュー、「東京ナイト・クルーズ」という90分のプログラムなんです。
カー・オーディオとは思えないほど素晴らしい音でジャズを聴きながら、東京の夜景がきれいなところを、クルージングするわけです。
でもこれが単にそれだけではないんです。

その選曲が素晴らしいんですね。
たとえば、都心から永代橋を渡るんですが、その直前に曲がフランク・シナトラの有名な、「ニューヨーク!ニューヨーク!」に変わる。
あ、曲が変わった・・・と思っていると、永代橋にかかります。
すると安西さんが、
「右を見てください」
と言ったんです。
言われるままに右を見ると、そこにはまるでマンハッタンのような、高層ビルの夜景が・・・。
「ニューヨーク!ニューヨーク!」と一緒に見ると、佃島がマンハッタン島、隅田川がハドソンリバーに変わるのです。
信じられないくらい美しく存在している。
永代橋だけでなく、夜景にいちいち合う曲が選曲されるんですよ。
東京の夜景といえば、照明デザイナーの第一人者、石井幹子さんが手がけたレインボーブリッジが有名になっています。
それを体験させてくれるために、わざわざコースを都心ではなく、湾岸線のほうから渡るんですから、そのこだわりようっていったら、本当に脱帽モノです。
「こちらから渡るのが、一番きれいなんです。お台場の夜景もよく見えるし」
と安西さんは解説してくれる。
本当に最高の夜景を、最高の状態で、最高の選曲で体験させてくれるわけです。

もちろん夜景だけじゃない。
ボクたちが永代橋を渡って向かった先は、なんと24時間営業のパン工場。
それも、とても美味しいパンなんですよ。
東京のセレブの間では、知る人ぞ知るという大人気のパンです。(だから24時間操業しても、売れ切れ続出なんですけどね)
そこで、ボクのために安西さんがパンを予約していていてくれ、プレゼントしてくれるんです。

驚きはまだまだつづきます。
あまり夜景のないところでは、ジャズのクイズを出してくれたり、東京タワーのベストスポットで記念写真を撮ってくれ、それを安西さんのホームページに載せてくれたりする。
東京で一番標高の高い山、愛宕山の上にある「愛宕神社」で夜のお参りをしたり、とっても楽しい時間なんですよ。
クルージングの最後のほうで、六本木の渋滞につかまると、曲を変えます。
すると安西さんどこからかおもむろにハーモニカを取り出し、曲に合わせて演奏をはじめたのです。
それがめっぽう上手い!
プロはだしの演奏。
これには参りました・・・。

めったに体験できない90分の体験でした。

通常、タクシーの商品はA地点からB地点の移動です。
でもジャズタクシーはA地点からA地点に戻るのです。
これって、商品の意味合いを変えていますよね。

「付加価値」ではなく「独自の価値」

まさに「付加価値」なんていうレベルではなく、完全に「独自の価値」です。
ものすごい価値があります。
わざわざ大阪や北海道から、このタクシーに乗りに来る理由がわかります。
そして価格だって、決して高くないんです。
若いOLが、恋人にプレゼントする時に考える予算よりも安いと思う。

こういうタクシーがあったら、ジャズが好きな人はたまらないですよね。
実際に、一部上場企業の社長さんなんかにリピーターが多いんです。
郊外の自宅に帰るときに、会社が用意したハイヤーを使うのではなく、『JAZZ TAXI』をご指名する人がいるんですね。
それもひとりやふたりではなく、何人も。
だから安西さん、ほとんど流しでお客をつかまえることはしていない。
だいたいが、予約で埋まってしまう。

安西さんの名刺がまたすごい。
自宅が江東区の木場にあるということで、紙の名刺ではなく薄い木の名刺。
『JAZZ TAXI Anzai』という英語の他に、携帯電話番号が書いてるのですが、それだけではないんです。
なんとその名刺、世界的に有名なジャズミュージシャンのサインが印刷してあるんです。
ボクはヘレン・メリルのサインがはいった名刺をもらいました。

「この安西さんの名前もヘレン・メリルが書いたのですか?」
「そうなんです。サインをしてもらうときに、ボクの携帯番号も書いてもらって、それを印刷して名刺にしているんです。」

実はこの『JAZZ TAXI』、海外の有名なアーティストが、来日するとご指名で予約が入るんですね。
ニューヨークのジャズクラブには、安西さんの名刺が額入りで飾られていて、もう有名人になっているんです。
だからニューヨークのジャズメンたちは、来日したときに、このタクシーに乗るわけです。

安西さんの『JAZZ TAXI』に乗った、有名ジャズミュージシャンだけでも、本当にすごいですよ。

チック・コリア
レイ・ブライアント
穐吉敏子
ヘレン・メリル
マル・ウオルドロン
デビット・マシューズ
ローランド・ハナ
ランディー・ブレッカー
カーティス・フーラー

ね、すごいでしょ。
ジャズ好きな人なら、このタクシーにわざわざ乗った人たちが、超一流の世界的ミュージシャンだってこと、わかりますよね。

さてさて、ボクの「東京ナイトクルーズ」が終りに近づいた頃、安西さんが
「Get Jazzed !」
って言ってくれました。
これは「楽しくやろう!」みたいに意味ですよ。
「スイングしなけりゃ意味ないですからね。」
と、安西さんはあのデューク・エリントンのスタンダードを引用して、言っていました。

本当にお客さんに悦んでもらうことが、この『JAZZ TAXI』のミッションなんだって、ことが感じられました。
東京のタクシーの数が4万台以上ですから、タクシーの運転手さんは、たぶんものすごい数がいらっしゃいます。
その中で、タクシーの仕事を本当に悦びをもって、めいっぱい楽しんでいる人は何人くらいいるでしょう?
たぶん、少ないと思います。
でも、安西さんは確実にそのひとりです。

おまけに安西さんはブログやSNSでも発信していました。
独自の価値を創出して楽しんで仕事をする。

商品の意味合いを変えた。
個人を出して発信。
自分の好きを極めるくらいハマる。

独自化の3つの考え方、全ての要素が入っています。

よそでは絶対にやらない、そういう価値を創ろう

一見「独自化」なんてできそうもない、タクシーっていう業界だって、これだけ独自化している人がいるのです。
なんだか勇気がわいてきますよね。
視点ですよ、視点のもちかただけで、いろいろな展開が見えてきます。
常識に縛られていては、まったく前に進めません。

だからあなたも今日から、「独自化」の道を歩きましょう。

まず覚悟することです。
よそがやっていることは、絶対にやらない。
それを超える、圧倒的な価値を創る。

そういう覚悟が必要です。
「コンセプト」という言葉がありますよね。
これは「概念」というふうに捉えられていますが、語源を調べていくと、その中に「決意」という意味もあるということがわかります。
そうなんですね。
「コンセプト」っていうものは、ぶれたり迷ったりしてはいけないんですよ。
だから「コンセプト」は覚悟が必要なのです。

さあ、あなたも決意してください。
既成概念や業界の常識、成功体験に縛られない視点を持つ。
そして、あなただけが提供できる「価値」を創出するということ。

ま、はっきり言って、こう思うだけでも変わってくると思いますよ。
そう思った瞬間から、あなたの脳はそういうふうに働こうとするのです。
すると、視点が変わったり、ものごとに対する考え方が変わっていきます。
当然今までとはちがう世界が見えてきます。

決意してください!

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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