「情報」が生存のための必須道具|ティオティワカンのピラミッド

認知考古学の研究者と話した

雨あがりの金曜の深夜に会った、40代なかばの認知考古学の研究者は、考古学者というより写真館のオーナーかカメラマンのようなイメージだった。
さっぱりとしたスーツに白いシャツ、無精ひげなのに清潔感のある外見。
好奇心があふれる知的なまなざしをしていた。

金曜の午後11時過ぎ、東京の郊外、私鉄駅の近くの地下にあるバーのカウンター。
50年代のジャズがゆったり流れている、感じのいい店。

認知考古学というのは、従来の考古学(プロセス考古学と言うらしい)とは違うアプローチで、心の進化を研究する進化心理学を取り入れ、遺物・遺跡の分析から古代人の精神状態を解明しようとする。
そういう考古学があるということ自体、面白いと思った。

「メキシコのティオティワカンのピラミッドは、最初は小さかったんですけど、時代とともに大きくなってきたんです」
彼は、ワイルドターキーのグラスを透かし見るようにしながら、そう言った。
ちょうど、流れていたビル・エバンスの曲が終わった時だった。

太陽のピラミッドと月のピラミッド

太陽のピラミッドと月のピラミッド

「そうなんだ~」ボクはタバコに火をつけながら言った。
「発掘調査で、内部に古い時代のピラミッドが発見されたんです。そして驚くことに、その最初に建ったピラミッドは、ティオティワカンの町よりも古かったんです」
「え?ということは、町になる前からピラミッドがあったってことなんだ」
「そうなんです。最初は今よりも小さいピラミッドだけがあったんです。その後、そのピラミッドの近くに人が定住するようになり、人口が増えていくたびに、ピラミッドも大きくなっているんです」
「最初はピラミッドで、それから人が集まった。逆だと思ってた」
それはちょっとした驚きだった。
人々が集まって、人口が増え、それから何かの目的で巨大な建造物ができたものだとばかり思っていた。
それが最初にピラミッドがありき。
それも最初のピラミッドができてから、それは7回ほど建て替えられ、そのたびに大きくなってきたということ。
ティオティワカンの町は、最盛期には人口が15万人以上いたらしい。

「ティオティワカンのピラミッドは、雨季と乾季とを知らせるための装置なのです。毎年雨季がいつから始まって、いつ終わるか。乾季がいつ始まって、いつ終わるか? それがわかるんです」

彼の話しによると、一年うちのある日、ピラミッドの決められた位置から日が昇る。
その日を境に、雨季になる。
あるいは乾季になる。
そういうふうに、ピラミッドは、カレンダーの役割をしていたもの。
そういう装置になっていた。

雨季になる時期、乾季になる時期を知ることがどうして重要かというと、それを基準に農耕をするから。
食べ物を得るために、とっても重要なことだった。
ということは、生きるために絶対に必要な情報だった。
確かに、古代で人々は、太陽の位置や星の位置などを頼りに、農耕の時期を決めていた。
それは生死をかけるほど、大切なことだった。
ということは、「情報」が生存するために、必要なコトだったってこと。

大切な情報がすぐにわかる場所。
そこに住みつき、町が大きくなっていく。
なるほど。
今までの文明論を覆すような話だった。

現代のビジネス世界でも生存するためには、情報がとっても大切。
自分の業界の情報や新しいテクノロジーの情報。
多かれ少なかれ、情報を集めそれを利用してビジネスを展開している。
ビジネスにおいては、情報の価値はすごく大きい。
ソーシャルメディアの登場で、情報格差が企業格差になっていく時代だ。

しかし、それは古代だって同じだってこと。
太古の昔から「情報」は、価値のあるものだった。
人間は情報を道具に、生存してきた。
情報格差はそのまま、貧富の差になっていた。
それは知性があるゆえに、必然のことだった。
人間が人間に進化して、生き残るために。
人間を人間たらしめるために。

彼の話しを聞いていてボクは、なんとなく、遠い歴史のかなたで生きていた、見知らぬ人々に親近感を感じていた。

BGMが、ジェリー・マリガンの「ナイトライツ」に変わった。

The following two tabs change content below.
Avatar photo
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
—————————————————————

現在募集中のセミナーや講座

————————————————————–

・4/5(水)[リアル開催]エクスマトークセッション
「エクスマ的Instagramのビジネス活用」


Instagramをビジネスに活用したいけど うまくできていないっていう方へ
ぜひこのセミナーに来てください 。
Instagramを活用して、ビジネスの可能性を広げよう!

【4/5 エクスマ的Instagramのビジネス活用セミナー】

・4/19 午後2時 エクスマトークセッション in エクスマスタジオ

テーマは
「SNSも激しく進化している時代でも SNSビジネス活用の基本は変わらない」

トークセッションは、少人数制の10名限定です。
僕のセミナー(約1時間)
エクスマの基本やSNSのビジネス活用、販促の基本など

その後参加者さんからの質問や相談に応えます。
そんな感じで、皆さんとトークを楽しみながら、グループコンサルのような形式でやります。

自分の話をしたくない人は、話さなくても大丈夫(笑)
聞いているだけでも充分楽しめるように進行します。
詳細は以下のブログから見てね。

【4/19 午後2時 リアル開催 エクスマトークセッション】

・4月20日(木)午後1時『エレメントE』映画のことを話そう

エクスマ塾生だけが参加できるリアルセミナーです。
映画をテーマにトークをしていくセミナー。
毎回さまざまな映画を取り上げ、僕がどういう視点で映画を見ているか、参加者さんがどんなふうに映画を観ているか。
そんなことをみんなで話します。
映画を観るということは、楽しい時間を過ごすってこと以外にもいいことがたくさんある。

・生きられない他人の人生を生きることができる
・知識や教養を身につけることができる
・人間的な魅力が増す

エクスマ塾生には一度は体験してもらいたいセミナーです。参加表明お待ちしています。

【4月20日(木)午後1時『エレメントE』映画のことを話そう】

・2023年オンラインエクスマ塾

2023年のエクスマ塾は105期、106期、107 期
エクスマ塾ってどんなことやるの?
どんなことが得られるの?
そう思った方は以下から詳細をみてね

【募集中】2023年オンラインエクスマ塾

・【エクスマ塾生限定】エクスマTikTokアカデミー「ショート動画特訓塾」インスタリール、YouTubeショート、LIVE配信にも対応

ショート動画はまだブルーオーシャンです。
見ている人がすごく多いのに、発信している人はとても少ない。
自分に合ったコンセプトを発見したら、成功しやすくなる。
だから、早めにやった方がいい。

でも、ショート動画をビジネス視点で活用、発信するのは、独学ではかなり難しいのも事実。
そこで今回、エクスマ塾生さん向けに、TikTokとショート動画を特訓する講座を企画しました。

詳細はこのブログから見てください

・【エクスマ塾生限定】「エクスマ学院」

「エクスマ学院」は、今まで知らなかったことを知って、興味を持ったり、ワクワクする場。「遊び」と同じです。
学ぶことは楽しい! 学びは人生の中で最高のエンターテインメントですよ!

エクスマ学院は、一見ビジネスとは関係ない様々な講座を実施します。
歴史、文学、音楽、美術、物理学、心理学、映画、食、テクノロジー
などの講義とワークをします。

【エクスマ学院3期募集中】

・エクスマ初期3部作電子書籍で発売開始!

第一弾として2001年に発売された「『モノ』を売るな!『体験』を売れ!」が発売されています。以下から見てね。

『モノ』を売るな!『体験』を売れ!電子書籍

 


・講演依頼

オンラインでもリアルでも講演の依頼は大歓迎です。
社内研修、業界団体、勉強会、なんでも気軽に依頼してくださいね。 

【講演依頼はここから】

・エクスマショップ

僕がデザインしたエクスマオリジナルアイテム、Tシャツやパーカーなどを売っています。ここだけでしか買えません。一度見に来てね。

【エクスマショップ】

・藤村正宏のメルマガ

僕のエクスママガジン<無料>です。

【藤村正宏のメルマガの登録はこちらから】

僕のInstagramやTwitterをフォローしてくれたら嬉しいです!
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • tiktok
SNS活用エクスマ思考ジャズマーケティング今を読む音楽
藤村 正宏をフォローする
マーケティングコンサルタント藤村正宏ブログ
タイトルとURLをコピーしました