マーケティングがうまくいかない本当の理由|戦略の前に観測がある

サロマ湖の夕陽

サロマ湖の夕陽も観察するまで存在しない?

量子の「観測問題」

量子論の本を読んでいて、マーケティングのことに思いを馳せているうちに、面白い仮説を妄想しました。

量子の世界には「観測問題」という、まるでSF映画のような不思議な現象があります。

物質の最小単位である素粒子は、誰も見ていないときは「波」のように空間をフワフワと漂い、どこにいるか確定していません。しかし、人間が機械を使って「観測(見た)」した瞬間、その波は一つの点に収束し、「粒」として位置がピタッと確定するのです。
「見るまでは結果が決まっていない」「見た瞬間に、現実が確定する」というのが、最先端の物理学がたどり着いた世界のルールです。

実はこれ、ビジネスの世界でもまったく同じことが起きているんじゃないかな、って思ったのです。

マーケティングの観測問題

マーケティングがうまくいかない。そう相談を受けることは、決して少なくありませんSNSを頑張っている。発信もしている。AIも使い始めた。セミナーにも行っている。それなのに、手応えがない。売上につながらない。反応が薄い
そんなとき、多くの人は「やり方が間違っているのかな」「もっと新しい手法が必要なのかな」「時代が変わりすぎてついていけないのかな」と考えます

でも、長年いろいろな現場を見てきて、僕はだんだん、別のところに原因があると感じるようになりましたマーケティングがうまくいかない理由は、戦略が悪いからではない。もっと手前にあるそれは、「世界をどう観測しているか」です

たとえば、こんな言葉を口にする人がいます。
「お客さんは、もう安さしか見ていない」
「この業界は、もう飽和している」
「SNSは若い人のものだ」

この言葉を発しているとき、本人は「現実を冷静に見ている」つもりです。でも、それは本当に“現実”でしょうか。それとも、自分がそういう世界を「観測してしまっている」だけなのでしょうか

世界は一つに確定して存在しているわけではない

世界は最初から一つに確定して存在しているわけではありません同じ市場。同じ商品。同じ価格帯。それでも、うまくいく人と、うまくいかない人がいる。この差を、ノウハウだけで説明するのは、正直、無理があります

ある人は、「お客さんは冷たい」と言いながら、淡々と数字だけを追う
ある人は、「人は本当は温かい」と信じて、言葉や体験を丁寧につくる

どちらも、同じ現実を見ているようで、まったく違う世界を観測しているのです
そして、その観測にふさわしい結果を、ちゃんと受け取っている

AIは、その観測を強化します

「お客さんは価格しか見ていない」という前提でAIに相談すれば、AIは価格競争のデータを集め、値下げ戦略を提案する
「体験や物語に価値がある」という前提でAIに相談すれば、ストーリー設計やコミュニティづくりの案を出す

AIは中立です。
でも、問いの前提は中立ではない
。だから、AIを使っても成果が出ない人は、戦略以前に、観測が固定されてしまっていることが多いのです

あなたがどんな世界を信じるか?

マーケティングとは、「正しい答えを探すこと」ではありません
「どんな世界を信じるか」「どんなお客さんと出会いたいか」
、その選択の連続です
でも多くの人は、無意識のうちに、自分で自分の世界を狭く確定させてしまう 。「どうせ売れない」「どうせ分かってもらえない」「どうせ値段の話になる」 。そう観測した瞬間、マーケティングはただの消耗戦になります

一方で、うまくいっている人たちは、少し違います。彼らは、楽観的すぎるわけでも、現実逃避をしているわけでもない。ただ、観測の余白を残しているのです
「もしかしたら、こういう人がいるかもしれない」
「まだ言語化されていない価値があるかもしれない」
「この体験、誰かの心に刺さるかもしれない」

そうやって、世界を一気に確定させない。この姿勢が、マーケティングを“探索”に変えていきます

戦略は、観測のあとに来るものです観測がズレたまま、どれだけ精緻な戦略を立てても、結果はズレ続けます。でも、観測が変わると、同じ戦略でも、まったく違う意味を持ち始めるこれは、精神論ではありません 。AI時代の、とても現実的な話です

もし、マーケティングが苦しくなってきたら。やり方を変える前に、少しだけ立ち止まって、自分に問いかけてみてください
「いま、自分はどんな世界を観測しているだろう?」
「お客さんを、どんな存在として見ているだろう?」
「未来を、怖いものとして見ていないだろうか?」
この問いに向き合うだけで、世界の見え方は、少しずつ変わり始めます

マーケティングがうまくいかない本当の理由。
それは、時代でも、ツールでも、才能でもない

観測が固定されてしまっていることです
そして、その観測は、いつからでも、自分で選び直すことができるのです

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 「観測を固定しない」ための具体的な第一歩はなんですか?

A. まずは、自分の口癖や思考のクセに「気づく」ことです。「どうせ高いと売れない」「今はこういう時代だから」といった言葉が浮かんだら、「本当にそうだろうか?」「もしかして、自分がそう決めているだけではないか?」と、自分自身に問いかけてみてください。その「疑い」を持つこと自体が、観測に余白を生む第一歩になります。

Q2. これは「引き寄せの法則」や単なるポジティブ思考と同じですか?

A. 似ているように感じるかもしれませんが、精神論ではなく、極めて現実的なマーケティングの構造の話です。人間は、自分が無意識に設定した「前提(観測)」に基づいて、集める情報や選択する行動を変えてしまいます。前提がズレていれば、どれほど優秀なAIや最新のSNSを駆使しても、ズレた結果しか出ないという事実をお伝えしています。

Q3. AIを活用する際、「観測」は具体的にどう影響するのですか?

A. AIへの「問い(プロンプト)」に、あなたの観測がそのまま表れます。「どうすればライバルより安くできますか?」と問えば、AIは価格競争のための答えを出します。一方、「どうすればお客様の心に残る体験を作れますか?」と問えば、全く違うアイデアを出してくれます。AIは、あなたの「観測」を恐ろしいほどの精度で増幅させる鏡なのです。

Q4. 自分は観測を変えられても、チームや部下が古い観測のままの場合はどうすればいいですか?

A. 「正しい/間違っている」で議論するのではなく、「もし、お客様が〇〇だとしたら?」という「仮定の問い」をチーム内で共有してみてください。いきなり現実の見方を変えるのは難しくても、ゲームのように「もしもの世界」を一緒に探索(観測)してみることで、チームの視点は少しずつ柔軟になっていきます。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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