文化・芸術

アート思考

ビジネスとアート思考:【第5話】タヒチへ逃げた銀行員が、本当に描きたかったもの

もし、あなたが誰もが羨むような安定したキャリアと収入を手に入れていたとしたら、それをすべて投げ捨てて、先の見えない夢に飛び込むことができるでしょうか。19世紀後半のパリ。まさにその決断を下し、人生をまるごとひっくり返してしまった男がいました。ポール・ゴーギャンです。実は、ゴーギャンは最初から画家だったわけではありません。彼はパリの証券取引所で働く、非常に優秀な株式仲買人(今でいう金融エリートのバンカー)でした。高給を稼ぎ、美しい妻と5人の子どもに恵まれ、ブルジョワ階層としての豊かで何不自由ない暮らしを送っていたのです。日曜日に趣味で絵筆を握り、印象派の絵画を買い集める「裕福なコレクター兼アマチュア画家」。それが30代半ばまでの彼の姿でした。
アート思考

ビジネスとアート思考:【第4話】絵の具チューブからそのまま叩きつけた、ゴッホの熱量

若い頃、僕はニューヨークで暮らしていた時期があります。休日に足を運んだニューヨーク近代美術館(MoMA)で、忘れられない出逢いがありました。子どもの頃、釧路にあった父のアトリエで画集を開いては、ずっと憧れの眼差しで見つめていたあの絵――フィンセント・ファン・ゴッホの『星月夜』。その「本物」が、目の前の壁に掛かっていたのです。作品の前に立った瞬間、息をのみました。印刷された画集のページでは絶対にわからなかった、圧倒的な「絵の具の厚みと生々しさ」。
アート思考

ビジネスとアート思考:【第3話】リンゴを転がして何十回も描き直した、ある男の執念

油絵の具とテレピン油の独特な匂いが立ち込める部屋で、棚から分厚い画集を引っ張り出してめくっていた日のことを、今でもよく覚えています。僕の父親は、平日は会社員として働きながら、週末は絵筆を握る画家でした。北海道の釧路で「釧路美術協会」の立ち上げメンバーに名を連ねるほど、情熱を注いで絵を描いていた人です。(定年退職後は本物の画家になった)家には父のアトリエがあり、子どもの頃の僕にとって、そこは日常のすぐ隣にある不思議な別世界でした。中学生になったある日、そのアトリエでたまたま開いたのが、ポール・セザンヌの画集でした。名画と呼ばれるその絵を前にして、思春期の僕は心底首をかしげてしまったのです。
アート思考

ビジネスとアート思考:【第2話】アトリエを飛び出した画家たちが、光を掴めた理由

19世紀半ば、絵画の世界にとてつもない激震が走りました。「写真機(カメラ)」の実用化です。それまでの画家たちにとって最大の価値であり、誇りだったのは「目の前にある現実を、写真のように寸分違わずキャンバスへ写し取ること」でした。王侯貴族の肖像画、歴史的な戦闘の記録、壮大な建築物。何ヶ月もアトリエに籠もり、神業のような筆づかいで対象をリアルに再現することこそが、画家の存在理由であり「正解」だったのです。ところが、そこに突如としてカメラが現れました。レンズを向けてシャッターを切れば、どれほど熟練した画家が何日もかけるデッサンよりも正確に、一瞬で輪郭を記録してしまう。
アート思考

ビジネスとアート思考:【第1話】既製品をひっくり返した作品から、ビジネスの原点に迫る

1917年のニューヨーク。ある美術展の会場に、前代未聞の「作品」が持ち込まれました。木箱から取り出されたのは、白く光る陶器。どこからどう見ても、街の衛生器具店で普通に売られている男性用の小便器でした。しかも、作者本人の名前すら書かれていない。表面には「R. MUTT 1917」という偽名のサインが、黒いペンキで殴り書きされているだけ。タイトルは『泉(Fountain)』。
エクスマ思考

【観光大学】谷崎潤一郎『陰翳礼讃』で読み解く「あかん鶴雅別荘 鄙の座」の美学

僕たちは今、あまりにも明るすぎる世界に生きている。コンビニのLED、スマートフォンの液晶、都市のネオン。どこへ行っても「均一な光」が空間を支配し、影は悪者であるかのように追い払われてしまう。だからこそ、この宿に足を踏み入れるたび、強烈な安堵感とともに、ある一冊の古典を思い出す。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』。北海道・阿寒湖のほとりに佇む「あかん鶴雅別荘 鄙の座(ひなのざ)」。ここは単なる高級温泉旅館ではない。谷崎がかつて、西洋化していく日本の中で失われゆく美を惜しみ、必死に書き留めた「陰翳(いんえい)の美学」が、現代のモダンな建築と奇跡的な融合を果たした空間。
AI活用

AIが作った曲に、どうしても足りない「あるもの」とは?

今、マーケティングの領域もAIがほぼ100パーセント理論をマスターしています。誰でも売れるキャッチコピーやマーケティングのシナリオをAIで作れる時代です。だけど、全員がその「正解のロジック」に頼り始めたらどうなるか?世の中が似たようなやり方、似たような商品、似たような発信ばかりになって、どんどん差がなくなっていってしまいます(コモディティ化ってやつですね)。AIが浸透すればするほど、人間は逆に「人間らしさ」や「人との関係性」を求めるようになります。 完璧で調和された正解よりも、ちょっと不完全で、無駄があって、失敗や葛藤があるような「人間らしい揺らぎ=ノイズ」にこそ、これからの時代、他には真似できない独自の価値が宿るんです。ロジックよりも、感情。 正解よりも、あなたらしさ。あなたのビジネスに、AIでは代替できない「人間らしいノイズ」をどう組み込んでいくか。
エクスマ思考

「一つの命を救える人は、世界も救える」 映画シンドラーのリストから

この映画を観たあと、しばらく頭から離れなかった言葉がある。「一つの命を救える人は、世界も救える」シンドラーのリストという映画の中で出てくる言葉なんだけど、観終わったあとも、ずっと残る。最初は、正直ちょっと大げさな言葉にも聞こえる。「世界を救う」って、そんな簡単な話じゃないし、どこか現実離れしている感じもする。でも、よく考えてみると、世界って、結局は「誰か一人ひとり」の集まりなんだよなって思う。
エクスマ思考

【観光大学】アドベンチャートラベル 『あかん鶴雅別荘 鄙の座』石川啄木カクテル

このホテルには、少し不思議な空間がある。石川啄木に関する書籍が、100冊以上も並んでいるライブラリー。普通の宿泊施設では、まず見ない光景。なんとなく手に取る。ページをめくる。そこにあるのは、成功者の言葉じゃない。むしろ、うまくいかない、揺れている、整っていないそんな、生々しい人間の記録。
エクスマ思考

【観光大学】アドベンチャートラベル 『釧路市湿原展望台』と『釧路市博物館』

『釧路市湿原展望台』と『釧路市博物館』昨日、鶴雅グループの『つるがチャンネル』の撮影のため、釧路市の『釧路市湿原展望台』と『釧路市博物館』に行ってきました。釧路市が生んだ建築界の鬼才、毛綱毅曠(もづな きこう)さんが設計した、有名な建築です。(毛綱さんは、僕の高校の先輩でもあります。)この2つの建築は同時期に完成し、日本建築学会賞を受賞したペア作品として有名。僕も何度も訪れています。