5年後なんて誰も予想できない 〜即興経営をしよう

たくさんのメッセージありがとうございます

今日、57歳の誕生日でした。
お祝いのメッセージ、ありがとうございます。
心づかいと愛情を感じました。
本当にたくさんの人に支えられて、今があるんだなって、感謝しています。
何も恩返しはできませんが、自分にできること、得意なことで、一人でも共感してくれるような、何か新しい視点を発見してもらえるような、そんなことができたらいいなと思っています。

これからもよろしくお願いします。

ジャズに名曲はない

57年間を振り返ってみると、自分の人生に決定的な影響を与えてくれた人っていうのは、何人かいるものです。
高校のときの先輩、荒川さんは、確実にその一人。
ボクにジャズの素晴らしさを教えてくれた人です。

ボクは音楽が好きです。
特にジャズが好き。
高校のときからずっとジャズを聴いていました。
そのジャズを聴くきっかけが、この荒川さんという先輩だったのです。

荒川宗治さんという先輩の部屋で、初めて出会った音楽。

【ジャズ】

荒川さんは他校の先輩だった。
地方から釧路の高校に入学した学生たちが住む下宿屋に下宿していました。
たまたまボクの友人が荒川さんのお隣の部屋だった関係で、仲よくなった人だった。

音楽、特にジャズが好きで、自分でも見事なジャズギターを弾いていた。
先輩の部屋には、当時の高校生が持つには不似合いな、高価なステレオのコンポーネントと音のいいスピーカーがあり、たくさんのジャズのレコードがあった。
すごく面白い先輩で、ちょっと不良で、ボクたちはよく放課後に荒川さんの部屋でジャズを聴きながらタバコを吸ったり、酒を飲んだり、麻雀したりしていました。

JAZZのライブは即興演奏がおもしろい

JAZZのライブは即興演奏がおもしろい

荒川さんから、

「ジャズに名曲はない」

という言葉を聞いたのは、高校2年生の秋だった。
先輩の下宿にたむろするようになってすぐのことでした。
そう言われて、すごく不思議だった。「なんで?」って。

即興演奏がジャズの価値

ある日、荒川さんの下宿に行ったとき、ジャズが流れていた。
「ジャズってなんか難しそう」って思った。

「これ、ジャズですよね?」
「ジャズだよ」
「ジャズっていいですか?」
「おもしろいよ」

30センチ角くらいの紙レコードジャケットを見て、「これ、何ていう曲なんですか?」って聞いたら、「〝チュニジアの夜〟っていう曲だよ」。
ピアノ演奏でした。

レコードを見たら、「チュニジアの夜」が3曲入っていた。
「A Night in Tunisia」
「A Night in Tunisia (alternate take #1)」
「A Night in Tunisia (alternate take #2)」

「えっ、同じ曲ばっかりじゃん。なんでこんな同じ曲ばっかり入っているの?」とボクは聞きました。
そうしたら、荒川さんの言った答えがこれでした。

「ジャズに名曲はないんだよ」

「どういうこと?」
「ジャズで一番大切なのはimprovisation(インプロヴィゼーション)なんだ」と言うんです。
インプロヴィゼーションというのは即興演奏です。
ジャズの価値は即興演奏なんだ、と荒川さんは言うんです。

「どういうこと?」
「今から聞かせてやるよ」

それで聞かせてもらいました。
同じ曲なのに、感じがちがうのです。
なんとなく同じトーンなのですが、まったく別の曲と言ってもいいくらいのちがいだった。

「これは全部即興でやっているんだ」
「ええっ? これ、そのときに初めて弾いているの?」
「そう、本当に即興で弾いているんだよ。同じメンバーで同じ曲をやっても全部違う。だから、いい演奏と悪い演奏があるんだ」。

へ~~~と思った。

「ジャズはその場で演奏して、それがそれぞれの作品になっていくものすごくクリエイティブな音楽なんだよ」

荒川さんのその言葉を聞いて以来、ボクはジャズにのめり込んだんです。

ジャズセッションのような経営を目指すこと

即興演奏。
例えば同じ「マイ・ファニー・バレンタイン」という曲をマイルス・デイビスが同じメンバーで演奏したとしても、そのときの場所、そのときの気持ち、そのときの酔い具合などによって演奏はまったく変わってくるということなんです。
だから、ジャズに名曲があるのではなく、名演奏があるんだ、ということなんですね。
スゴイなと思った。
それからいろいろなジャズを聴くようになって、魅力に取り付かれていきました。

ボクは大学生の頃お金を貯めて、新宿のライブハウス「ピットイン」によく行きました。
日曜日の昼間や夜、あるいは土曜日の夜には有名な人が出るんですが、ある日曜日の昼間、トロンボーン奏者の第一人者の向井滋春さんのライブに行ったんです。
いまだに活躍されていますけれど、向井さんの演奏、好きなんですね。

その日、向井さんの演奏を聴いていたら、夜の部に出るサックス奏者の植松孝夫さんという人が客席にいた。
自分の出番の前に、早めに来て、向井さんの演奏を聴いていたんですね。
そうしたら向井さんが植松さんがいることに気がついて、「植松さん、こっちに来て一緒にやろうよ」と呼びました。
植松さんは「いいよ」と言って出てきたと思ったら、「この曲のこれね」と言っただけで、何の打ち合わせもせずに、いきなりその場でものすごい演奏を始めたんです。

それを見たとき、すげえな、これ、めっちゃ面白いと思った。
今この場所でしか聴けない演奏ですから、今ここで聴けるのは客としてすごくラッキーという感じでした。
しびれた。
即興演奏がジャズにすごい魅力になっているわけです。

何を言いたいかというと、今、そういう経営が実は求められているということなんです。

今、ビジネスの環境がどんどん変わっています。
環境がどんどん変わっているから、本当にその場のインプロヴィゼーション、アドリブ、即興演奏がすごく大事になってくる、ということなんです。

5年前に今の状況がわかっていた人っていないですよね。
スマートフォンがこれだけ普及するなんて、誰も予想していなかった。
人々がSNSという発信の道具を持ってこれだけ発信するようになるなんていうことは、5年前には想像もつかなかった。
ほかにも、新聞を読まなくなったり、書店で本を買わなくなったり、音楽CDを買わなくなったり。
服が売れなくなったり、・・・。
5年後に世の中がどうなるかなんて、予想できない状況です。

ということは、5年前に立てた5年後を見据えた経営計画は当てにならないということになる。
長期や中期の経営計画を立てても、それをそのとおり実現するのは無理だ、ということ。
この変化のスピードだと5年後はわからないですよ。
もしかしたら1年後もわからないかもしれないです。

というか、5年前から現在までの世の中の変化より、これから5年後の変化のほうが激しいのは、確実だと思う。
インターネットやSNSを中心に、情報量は加速度をつけて激増していく。
モノインターネットや人工知能、クラウド、通信インフラの進化が今までのビジネスや仕事の概念を変えていく。
そして人々のライフスタイルも、大きく変わる。

誰もが未来を予想することなんて無理な時代になる。

計画を立ててもそのとおりにはいかない、ということです。
というか、計画どおりに行ったら、それはある意味失敗かもしれない。

ヴィジョンを掲げ、それに向かって計画を立てながら行動して、行動しながら修正していく。
時には当初決めた計画を、環境に合わなくなったら、未練なく捨てることも必要。
そういうジャズセッションみたいな経営をしていかないと、これからは環境に合わなくなっていくのです。

まさにエクスマのセミナーでいつも言っている、

「ともかくやってみる、ダメだったら変えればいいんだから」

そういうことです。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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