風通しの悪いコミュニティは澱む

現代的な意味合いでのコミュニティとは「囲い込み」や「会員制」ではない

囲い込みや会員制のような硬い組織は窮屈だと感じるし、硬直した組織になる可能性もあります。

サービス業では、リピーターが増えるのはいいですが、実はコミュニティというのは風通しが悪くなると、澱むことがあるんです。
モンスターのような客がわがままを言い出したり、排他的な雰囲気になったり、コミュニティそのものの存続が危うくなることもある。

ホテル五龍館の『五龍館倶楽部』は盤石だと思っていた

長野県の白馬にある「ホテル五龍館」。
社長さんと女将さんは、エクスマを10年以上勉強しています。
ボクのセミナーや本にもたびたび事例で登場しています。
先日発売した「マンガでわかる!安売りするな!『価値』を売れ!」という本の舞台にさせていただいたホテルです。

リピーターがとても多い温泉ホテル。
なぜかというと、おなじみさんやファンの組織「五龍館倶楽部」という会員制のコミュニティがあるからです。
外から見ていると、この「五龍館倶楽部」、盤石なコミュニティのように思える。
ところがそうでもないということを知りました。
先日、塾生さん対象のセミナーに参加してくれた、女将さんの中村ゆかりさんから、興味深い話を聞いたのです。

セミナーの時に女性塾生さんと撮影 左から3人目が中村ゆかりさん

セミナーの時に女性塾生さんと撮影
左から3人目が中村ゆかりさん

「私は『五龍館倶楽部』というコミュニティがあるから、SNSはやらなくていいと思っていたんです」
中村ゆかりさんの話は、そう始まりました。

この倶楽部は入会金があります。
3000円の入会金を支払うと、さまざまな特典がある。
10泊したら1泊プレゼントとか、季節ごとに届くニュースレター、スキーのリフト券プレゼントなどなど。
ホテル五龍館のファンクラブみたいなものです。

このメンバーさんたちに、お手紙を書いて新しい宿泊プランなどを紹介すると、とても反応がよくて五龍館の売上にもとても貢献してくれる。
毎年何回も宿泊してくれるお客さまも多い。
女将さんのファンも増え、「五龍館倶楽部」のメンバーも順調に増えていきました。

ある頃から、白馬村の観光客に外国人が増えてきました。
オーストラリアの人たちが多くなった。
季節が逆ですよね。
だから向こうの真夏にスキーができるわけです。
白馬は雪質がいい大きなスキー場がたくさんあります。
長野冬季オリンピックのスキー競技の会場は、すべて白馬だったくらいです。
白馬はオーストラリアで人気になっていった。

そこで白馬村も村をあげてオーストラリアの観光客を受け入れるようにしたわけです。
もちろん五龍館にとっても、いいことです。
五龍館にも、外国人のお客さまが増えていきました。

ところが、おなじみさんの中からクレームが出るようになってきた。

「外国人が来るなんて、そんなの五龍館じゃない」
「リピーターを最優先にするべきだ」
「何年も通って1千万円以上使ってやっているのに」
「私が宿泊するときには、あなた(女将さんのこと)が五龍館にいるべきでしょ」
「五龍館は女将だけのものじゃない」
「SNSなんてやってほしくない」
「レストランを一般開放するなんて、五龍館じゃない」

等々、今まで応援してくれていると思っていたお客さまから、そんな発言を直接言われるようになった。
けっこう深い関係性になっていて、五龍館のことを好きと言っていた人たちからです。
もちろん全員じゃなく一部のメンバーです。
でも、影響力の高い人たちからも、そういう意見が出るようになった。

コミュニティが澱むとコミュニティそのものの存続が危なくなる

おなじみさんとしては、昔のほうがよかったということなんでしょうけど、五龍館だって世の中の流れや環境によって変わっていかなければならないわけです。
それに「決めるのはあなたじゃないでしょ?」ってこと。
経営方針を、リスクをとって決めているのは経営者です。
それなにに何のリスクもなくただ文句をいうだけ。
「五龍館は女将だけのものじゃない」って、意味がわからないですよね。
そんなのはおなじみさんでも、ファンでもないのです。

「風通しが悪いコミュニティは澱むってことを実感しました。コミュニティはリアルだけじゃなくSNSも活用することが大事なんですね」
と中村ゆかりさんが言っていた。

お互い負担のないコミュニティ。
ほどほどの距離感があるコミュニティ。
それが調和できる、これからのコミュニティの理想の形です。
そういうコミュニティはSNSがあることで実現するのです。

そして、そんな理想のコミュニティはSNSが登場したことで、つくりやすくなったってことです。
リアルの場だけでのコミュニティではなく、リアルの場とSNSでつながっているコミュニティが理想だと思う。

コミュニティを作る前に大事なのは、繋がりたい人と「共感」によってつながること。
そのためには、できるだけ本音で語ることが大事です。
SNSは共感を生むことができるツールなんだから、それをビジネスで活用しないのは怠慢。
手間がかかるから、みんなうまく使っていない。

でもね、今の時代、手間のかかることをしなければ、人の心は動かせないのです。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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