劇的な成功を追うのをやめると世界はゆるりと動き出す |AI時代の「観測」とマーケティング

「つるがチャンネル」撮影の様子

AI時代の「観測」とマーケティング

「何かを変えたい」。 仕事、売上、発信、あるいは人生そのもの。そう願うとき、僕たちはつい「大きな変化」を求めすぎてしまいます。劇的な成功や、流れを一気に変える一発逆転のドラマを。

しかし、現実はもっと静かに動いています。 音もなく、ドラマチックな演出もなく、気づいたときに「あれ?」と思うくらいの小さな変化の積み重ねこそが、世界の輪郭を変えていくのです。

世界を確定させない「観測」の力

量子論的な考え方では、世界は最初から確定しているわけではありません。僕たちの「観測」によって、初めて現実が立ち上がります。

とはいえ、意識を変えた瞬間に売上が倍増するような魔法はありません。変わるのは、もっと手前の部分。「言葉」が変わり、「視点」が変わり、日々「選ぶ行動」が少しずつ変わっていくのです

例えば、北海道で14軒のホテルを運営する「鶴雅リゾート」の事例を考えてみましょう。

彼らはYouTubeの『つるがチャンネル』で、毎日ショート動画を投稿しています。月に40本、1年で400本近く。これほど膨大な発信を、制作会社ではなく現場のスタッフが、台本作りから出演、編集まで自ら行っています。

もし彼らが最初から「効率的な広告」という観測だけで動いていたら、これほど「人間味のある裏側」や「スタッフの日常」をさらけ出すことはなかったでしょう。しかし、「スタッフの顔を見せる」という観測(視点)の転換が、現場の行動を変えました。

その結果、今では宿泊客から「〇〇さんに会いに来ました」「動画いつもみています」と、毎日のように嬉しい声が上がるようになっています。劇的な一発逆転ではなく、日々の小さな発信という「観測」の積み重ねが、お客様との関係性を静かに、しかし確実に変えたのです。

AIが加速させる「静かな変化」のループ

AI時代において、この「観測」の重要性はますます高まっています。 なぜなら、AIはあなたの問い(観測)をものすごいスピードで増幅するからです。

  1. 観測(視点)が変わる
  2. AIへの問いが変わる
  3. AIから返ってくる答えが変わる
  4. 日々の行動が変わる

このループが回り始めると、ある日ふと振り返ったとき、世界が以前とは違って見えることに気づきます。面白いのは、そのとき本人は「頑張って無理をした」という感覚があまりないことです。ただ、少し見方を変え、行動を選び直しただけなのです。

「面白がれる余裕」が未来を拓く

観測を変えるとは、単にポジティブになることではありません。 「もう無理」「どうせダメ」と世界を早く確定させてしまわず、「もしかしたら」「別の見方があるかも」という余白(可能性の雲)を残しておくことです。

マーケティングにおいても、仮説を閉じすぎず、面白がれる余裕を持つこと。その余裕が、検索の時代から「AI推薦の時代」へと移り変わる中での、強力な布石となります。

誰にも気づかれないくらいの小さな変化から、世界は変わります。 「あ、前と同じ世界なのに、なんだか生きやすくなっているな」。 そう思える日は、あなたの「観測」のほんの少しのズレから始まっていくのです。

よくある質問(FAQ)

Q1:小さな変化を大切にしたいのですが、つい「目に見える大きな成果」を焦ってしまいます。

A 焦りは「早く結果を確定させたい」という不安の裏返しです。まずは、鶴雅リゾートのショート動画のように「今日一日の小さな発信」や「一人のスタッフの笑顔」といった、コントロール可能な小さな行動に観測を向けてみてください。大きな成果は、その「静かな変化」が時間をかけて積み重なった結果として、後からついてくるものです。

Q2AIを使う際、具体的にどうすれば「観測」を変えることができますか?

A AIに問いかける前に、「もしこの課題に、他に10通りの解決策があるとしたら?」と自分に問いかけてみてください。世界を「一気に決めつけない」態度を持つだけで、AIへのプロンプト(問い)が変わり、返ってくる答えの質も劇的に変わります。

Q3:スタッフによる発信を毎日続ける秘訣はありますか?

A 「上手く見せよう」「正解を探そう」という観測を捨て、日常の裏側やありのままの顔を映し出す「面白がれる余裕」を持つことです。鶴雅リゾートの事例でも、完璧な台本よりも「スタッフの温度」が伝わる内容が、お客様との関係性を変えるきっかけになっています。

Q4:「AI推薦の時代」に向けて、今から何を変えていけばいいでしょうか?

A 効率的なデータだけでなく、AIが推薦したくなるような「人間的なつながりの記録」をネット上に積み上げておくことです。日々の動画投稿やブログ、SNSでの発信は、未来のAIがあなたを誰かに紹介するための「観測データ」になります。今この瞬間の小さな行動が、数年後の「AI推薦」の精度を左右する布石になるのです。

 

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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