ある日、僕はInstagramのタイムラインを眺めていた。
曇り空の午後、コーヒーの香りとともに、何気なくスクロールしていたんだ。
天気予報のアプリ。カメラのアプリ。文字起こしのアプリ。
気がつけば、僕はこの一ヶ月でいくつものアプリを買っていた。
Instagram広告を通じて。つまり、あの“販促的な何か”に、やられていたわけだ。
だけど──。
SNSを、販促の延長線上に置くことには、どこか違和感がある。
広告はたしかに機能するけれど、それは出会いの入口でしかない。
それだけで心が動くほど、今の人間関係って単純じゃないんだ。
SNSにおける最大の価値は、関係性の「構築」だ。
まるでワインのように、時間をかけてゆっくりと深まっていくもの。
売り込みばかりしていたら、酸っぱくなる。
もちろん、イベントの告知や商品の紹介だって必要だ。
でも、そればかりになったとき、SNSは急速に「つまらない場所」になる。
たとえば、あなたが友達とカフェにいるとしよう。
彼がずっと、延々と自分の仕事の話しかしないとしたら?
──「で、君は最近どう?」の一言もなく、ひたすら自社のPRをしてくるとしたら?
そう。SNSでの売り込み一辺倒の発信って、それと同じなんだ。
共感。それが、関係性の入り口になる。
だから僕は、こんな話をしたい。
うちの会社の税理士は、Instagramでときどき「素の顔」を出す。
ある日、彼が『キングダム』全巻を買ったという投稿をした。
すると、コメント欄は一気に沸き立った。
「お、キングダム税理士、誕生ですね(笑)」
「次回はキングダム語りましょう」
「僕も睡眠不足です、危険なマンガです」
……たった一冊のマンガが、人と人をつなげていく。
それって、広告では生まれないつながりだ。
SNSでは、「個」の発信が共感を生みやすい。
会社の顔ではなく、あなた自身の顔。
どんな想いで経営をしているのか。
どんな課題を、どんなやり方で解決しようとしているのか。
その語りこそが、人の心に届くんだと思う。
「忙しいから発信できない」って?
それは、たぶんちょっと違う。
本当に大切だと思っていることは、人はちゃんとやる。
夜の寝る前に歯を磨くように、朝のメールチェックのように。
発信は、「あなたらしさ」の習慣なんだ。
大事なのは、商品のスペックや価格じゃない。
あなたがどんな人間なのか、ってことだ。
その人が語る言葉に、耳を傾けたいかどうか。
それが、これからのビジネスを動かしていく。
SNSが普及する前、企業の情報発信は一方通行だった。
発信する。相手は受け取るだけ。
でも今は、関係性が循環する世界になっている。
ネットの中の関係性が、やがてリアルなつながりになる。
SNSは販促の道具じゃない。
それは、あなたと誰かの“距離”を少しずつ縮めていく、
関係性のコンポストみたいなものだ。
そして、そこから芽が出て、育って、
ふと気づけば、あなたのビジネスの花が咲いている──。
そういう時代なんだと思う。

藤村 正宏

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