関係性をつくるのは味噌を仕込むのに似ている

味噌蔵での気づき

以前、長野県の山あいの、味噌を作って販売している会社に行ったことがあります。
大きな味噌蔵に案内されて、仕込んでいるのを見せてもらったんです。
その時感じたこと。

「関係性をつくるのは、味噌を仕込むのに似ている」って。

味噌は、大豆を煮て、つぶして、麹と塩を混ぜ、樽に仕込みます。
ここまでの作業は数時間で終わりますが、本当の勝負はそのあとです。
涼しい場所に置いて、ゆっくり発酵を待つ。
数か月、時には一年以上。
3年寝かせる味噌もあります。
この時間が、美味しい味噌をつくるんですね。

人との関係も同じです。
名刺交換やSNSでの「フォロー」は、大豆を煮て樽に入れるところまで。
そこから、すぐに結果を求めても、まだ発酵は進んでいません。
お互いのことを少しずつ知り、やり取りを重ねて、時間をかけて信頼という旨味を育てていくのです。

味噌の発酵のように関係性も進む

発酵中の味噌は、見た目にはほとんど変化がありません。
「これ、本当に美味しくなるのかな?」と思うこともあります。
関係性も同じで、しばらく音沙汰がなかったり、目に見える成果がなかったりすることがあります。
でも、その静かな時間にも、確実に変化は起きています。
味噌の中で麹菌が働くように、人の心の中でも小さな信頼の積み重ねが進んでいるのです。

大事なのは、焦らないこと。
味噌を早く食べたいからといって途中で樽を開けすぎたり、かき混ぜすぎたりすれば、雑菌が入り、風味が落ちてしまいます。
関係性も同じで、過度な売り込みや、一方的な押しつけは発酵を壊します。
むしろ、安心できる環境を整えて、そっと見守るほうがうまくいきます。

そして、味噌が美味しく仕上がったときの喜びは格別です。
それは一朝一夕で得られない、時間の贈り物です。
人との関係も、長くかけて育った信頼は、ちょっとやそっとでは崩れません。

関係性づくりは、急いで結果を出す競争ではなく、美味しい味噌を仕込むような静かな営みです。
時間を味方につければ、あなたのビジネスはもっと深みを増していきます。

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北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」
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