エッジ効果を意識することで、店舗空間が価値を増す。

マリノアリゾートホテルはハーバーに面している

ボクのクライアント、福岡市にある「マリノアリゾートホテル」。
美しいヨットハーバーに面していて、窓からは海が見渡せるホテルです。
とてもいい環境にあるホテル。
どんなに忙しくても、ここに行くと一気にリゾート気分になれます。
ホテルの部屋もいいですし、海に面したレストランもいい空間になっています。

「エッジ効果」があるということなんです。

マリノアリゾートホテルの客室から見える風景

マリノアリゾートホテルの客室から見える風景

エッジ効果ってなんだ?

人間は動物の本能ともいえる無意識に行動が支配されていることがあります。
ですから、店づくりを考えるときには、その「無意識」についても意識していないといけません。

このエッジ効果もその要素のひとつです。

「エッジ効果? 聞いたことないなあ。」
確かに、言葉自体はあまり一般的ではありません。
でも、きっとあなたも知っていることです。

どうして人間はある場所にいるとき、いい空間だなとか、イヤな空間だなとか思うのでしょう?
その理由はいろいろありますが、この「エッジ効果」もひとつの理由です。

あなたがランチを食べようと、ガールフレンドとふたりでレストランに行くと、もう結構混んでいて、窓側の席も壁際の席もいっぱいでした。
ウェイターがすまなそうな表情で案内してくれたのが、店の真ん中のなんとなく落ち着かない席。
混んでいるんだから仕方ないかと思い、落ち着かない食事をしました。

こういうことを体験したことはありませんか?
おそらく、あなたも一度や二度は経験があると思います。
これが「エッジ効果」です。

人間は「エッジ」、つまり端や際が好き、という習性があるということです。
このレストランでの例では、屋外と店内が同時に見られる窓際の席から最初に埋まり、次に壁際の店内がよく見える席が埋まり、最後まで人気がないのが真ん中の席。
ここでは真ん中の席より窓際の席のほうが「エッジ効果」が高いということになるのです。
このほかに、たとえばヨーロッパの街頭のカフェはほとんど道路に面して椅子が並べられています。
これがまわりの活発な雰囲気を背後にしたなら、不安で落ち着かない場所になってしまうでしょう。
海辺のシーフードレストランが世界中どこでも流行っているのも、このエッジ効果によるものが多いと思われます。

誰もがもっている人間の本能

この人間の習性は、人間が無意識に感じていることで、人類に共通した約束事なのです。
これまでに、さまざまな学者さんが検証しています。
名著『かくれた次元』(みすず書房)で有名なエドワード・T・ホールや、人間の美意識と風景の関係を解き明かした、イギリスの地理学者J・アプルトン、オランダの社会学者デルク・デ・ヨンフェなど、興味深い研究がされているのです。
これにはどうも人間の遺伝子レベルが関係しているようです。
ボクたちの記憶には、原始時代からの記憶がまだ残っているということらしいのです。

面白いでしょ。

その原始時代から持っている現代人の記憶を刺激し、満たしてあげると、満足感が充足され、リピートビジター(何度も来店してくれるお客さま)が増えるという説を述べている人がいます。
伊藤正視さんという伊藤ハムの元社長さんです。

若い頃、ボクがまだアメリカ系の会社の頃、元三菱商事の方で、上司の鈴木富司さんという方に紹介してもらったんです。
鈴木さんのお友達が伊藤さんだった。
鈴木さんに連れられて、何度もご一緒に食事をしたり、ご自宅まで伺ったこともありました。

伊藤さんはテーマパークの研究をされています。
優れたテーマパークの研究書である著書『人が集まるテーマパークの秘密』(日本経済新聞社)という本も出版しています。
その中で語っていることがおもしろい。
ちなみにこの本は、集客を考える上でものすごく参考になります。
その一説にこういうことが書いてあります。

「人間にとって、よい景観とは恐怖を取り除いた環境がよい景観である。(中略)第一は、敵に対して自分の存在が発見されにくい場所である。たとえば大きな木陰や隠れ家などもその例に入る。第二は、自分のほうが外敵よりも先に発見できる有利な場所で、たとえば木の上や丘の上や坂道の上のほうにいて、やや見渡しのよい場所である。第三は、いざという時に、逃走距離(70メートル~80メートル)が確保され、かつ適当な逃げ場・隠れ家がある」
<『人が集まるターマパークの秘密』(日本経済新聞社)から抜粋>

エッジ効果もこの原始時代の記憶が関係しているのでしょう。

意図的にエッジを作り出すことで「価値のある空間」になる

では、先程のレストランでいうと、落ち着かない真ん中の席を「いい席」にするためにはどうすればいいのでしょう?

観葉植物やパーテーションなどを置いて、テーブルのまわりに「エッジ効果」をつくってあげれば、「いい席」になるわけです。
人間はエッジが好きということを知っていれば、こういう対策でお店をいい環境にすることができるのに、そういうことを意識して、商業空間や公共空間に活用している例はあまりみあたらない。
そのことを知らないがために、もっとよくできるのに、できていないお店がたくさんあります。
それどころか、エッジ効果の処理を誤ってしまうと、たいへんイヤな空間、お店をつくってしまうかもしれないのです。
そういうところって結構ありますよ。
「エッジ効果」を考えて、お店の家具のレイアウトや商品の並べ方、什器の配置を考えなければならないということです。

自分の店で「エッジ効果」がいいところと悪いところを調べてみましょう。
悪いところの「エッジ」を作るのためにはどうすればいいか考えてみましょう。

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藤村 正宏
北海道釧路生まれ。明治大学卒。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。経営者、ビジネスリーダー向けに「エクスマ塾」を実施、塾生はすでに1000名を超えている。著書は、海外にも翻訳され30冊以上出版。座右の銘「遊ばざるもの、働くべからず」

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