テレビを観ていて、CMが始まると、つい冷蔵庫に行ってお茶を入れたり、トイレに立ったり。
YouTubeで好きな動画を見ようとしたら、いきなり現れる「スキップできない広告」に、少しムッとしたり。
ああいうときって、たいてい広告の内容なんて見てないし、むしろ「この会社、なんかイヤだな」って、逆にイメージ悪くなったりする。
そんなこと経験したことありますよね。
「伝えるために、がんばっている」つもりの広告が、
実は、知らず知らずのうちに、人を遠ざけてしまっている。
そんな時代になってきました。
売り込みが“ノイズ”になる時代
かつてのマーケティングは、
「いかに注目されるか」がテーマでした。
・どうすれば振り向いてもらえるか
・どうすれば話題になるか
・どうすれば「いいね!」されるか
でも、いまは違います。
人は毎日、膨大な情報のシャワーを浴びていて、もう十分すぎるくらい「注目され疲れている」。
企業が「もっと伝えなきゃ」と思えば思うほど、
お客さんは、ちょっとずつ、静かに、離れていっている。
「しつこいな、この会社」って思われたら終わり。
売れる理由は、“共感”だった
ボクの塾に来てくれて、エクスマを勉強した北海道の薬屋さん。
そこは、大手チェーンじゃない。
全国展開もしていない。
でもね、1個1050円の石鹸が、月に128個も売れたんです。
これ、すごいことなんです。
同じ石鹸を扱っているメーカーさんも、「北海道で1番売れて30個くらいですよ」って驚いたくらい。
なぜ、そんなことが起きたのか?
答えは、シンプルです。
この薬屋さんは、“ちゃんと人とつながっている”お店だから。
ニュースレターを送り、メルマガを書き、InstagramやXなどのSNSで日々の出来事を共有し、お店に来た人とは、丁寧に話をする。
「あなたのこと、ちゃんと見てますよ」
「最近、調子、良くなってますか?」
そんな言葉が自然と交わされる。
だから、「この石鹸、いいですよ」と紹介されたときも、お客さんは、「あなたが言うなら、使ってみようかな」と思える。
信頼や共感の上にある“提案”は、売り込みじゃない。
それは、心が動く“会話”ってこと。
「売ろう」としないことで、売れる
売り込みの時代は、もう終わりつつあります。
これからは、
・あなたの考えを伝えること
・誰かを思って言葉を選ぶこと
・日々のちいさな出来事をシェアすること
そういう、地味だけどていねいな積み重ねが、お客さんとの関係をつくっていく。
時間はかかるかもしれないけれど、その関係は、広告よりずっと深くて、あたたかいものになるはずです。
「うちの商品、こんなにいいんです!」と叫ぶより、
「こんにちは、今日もいい天気ですね」から始まる関係のほうが、
よっぽど、心に届くってことです。
あなたの商品を“売る”ことよりも、
あなたの“想い”を届けることのほうが、大切になってきたのです。
それって、商売というより、ちょっとした“手紙”に近い。
相手のことを思って書く手紙には、自然と想いがにじみ出る。
エクスマ以外のマーケティングも、そんなふうになっていけば、もっと、やさしくて、おもしろい仕事になるんじゃないかなって思います。

藤村 正宏

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